セルヒオ・ガルシアの感動勝利を演出
夢舞台を作る“パトロン”という人々

パトロンの多くがガルシアの初メジャー制覇を願っていた

ガルシアがメジャータイトルを逃してきたことをパトロンは熟知。だからこそ、多くのファンが彼の優勝を願っていた
ガルシアがメジャータイトルを逃してきたことをパトロンは熟知。だからこそ、多くのファンが彼の優勝を願っていた【写真:ロイター/アフロ】

 米国以外の選手に対しても大歓声を上げるのがパトロンの素晴らしさだ。


 15番ホール、ガルシアが会心のイーグルを奪い歓声がマックスに達すると、ローズもバーディパットを決めて、ここでも大喝采が起こった。9アンダーでトップに並んで迎えた16番ホールパー3。ガルシアの放ったティショットはグリーンを捕らえピンに近づいていく。パトロンの応援に後押しされているように、ボールはカップへ向かい1メートル弱につけた。続くローズも負けじと2メートルにビタッ! 2人の超好プレーから生まれた歓声は、地響きのごとくコース全体に轟いた。


 ローズはしっかりとパットを決めてバーディ。ガルシアも問題なく決めるかと思われたが、無情にもカップに蹴られた。短いパットを外して何度もメジャータイトルを逃していることはパトロンも熟知。また、“悪夢”が起こるのかと、歓声が鳴り響き続けていたコース内が一瞬静かになった。


 観戦場所をキープするために筆者は18番グリーンサイドに移動。17番の結果はリーダーズボードで確認した。ローズがボギーを打ち、またガルシアが首位に並んだことが知らされるとパトロンたちは歓喜。2人の組についていると、両者へ同じように応援をしていると思えたが、パトロンの多くは何度もメジャーを逃してきたガルシアの初制覇を願っていた。

携帯利用禁止で濃密な時間を生み出していた

携帯電話が一切禁止されているからこそ、選手とパトロンの濃密な時間を生み出されていた
携帯電話が一切禁止されているからこそ、選手とパトロンの濃密な時間を生み出されていた【写真:ロイター/アフロ】

 ガルシアにとって大チャンスがやってきた。ローズは18番をパーとし、ガルシアは決めれば優勝の1.5メートルのパット。カップインの瞬間に突き上げようとしていたパトロンの拳が上がることはなかった。


 プレーオフ1ホール目でさらに大チャンスが訪れる。ローズがティショットを曲げてボギーとしたのに対し、ガルシアは3メートルのバーディパット。2パットでも優勝だが見事1パットで初メジャーを決め、今度こそ多数のパトロンの拳が突き上げられ、祝福の拍手はいつまでも続いた。


 マスターズにおけるパトロンは、単にプレーを見にきている観客ではなかった。選手たちを鼓舞するだけでなくパトロン自身もゲームに集中し、夢の舞台を作り盛り上げる役割を担っていた。


 余談だがマスターズでは携帯電話は完全禁止。使用だけでなく持ち込みも許可されておらず、見つかると即退場となる。最近ではむしろ携帯のアプリで観戦情報を提供するトーナメントも多く、マスターズの携帯禁止処置は時代の流れとは逆をいく。賛否両論がありそうなこの処置も、1つだけ明確なメリットがあった。それは他のことに気がとられてしまわないことだ。携帯を完全禁止にしているからこそ、選手とパトロンの濃密な時間を生み出せていた。

北村収
北村収

1968年東京都生まれ。法律関係の出版社を経て、1996年にゴルフ雑誌アルバ(ALBA)編集部に配属。2000年アルバ編集チーフに就任。2003年ゴルフダイジェスト・オンラインに入社し、同年メディア部門のゼネラルマネージャーに。在職中に日本ゴルフトーナメント振興協会のメディア委員を務める。2011年4月に独立し、同年6月に(株)ナインバリューズを起業。紙、Web、ソーシャルメディアなどのさまざまな媒体で、ゴルフ編集者兼ゴルフwebディレクターとしての仕事に従事している。

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