勝ち点剥奪と2チーム制の弊害 スペイン暮らし、日本人指導者の独り言(17)
リーグ閉幕、チームの成績は……
Bチームの最終節。アグレッシブなプレスを掛け、ほぼ敵陣で試合ができた。よりテクニカルなチームでつなぐ力は上だが、当たりに弱く情けない試合も多かった 【木村浩嗣】
ただ、今季から始めたA、Bの2チーム制の弊害も明らかになった(リンク1参照)。
まずは以前、ここに書いた得点力不足(リンク2参照)。
選抜をせず、登録人数枠(18人)にも満たないチーム(共に14人)ではどうしても選手層が薄くなり、そのしわ寄せは攻撃にいく。最も力不足の子供がFWをする。それはGKからビルトアップするチームだから、センターバックやMFに力の足りない子を起用すると攻守の前提である、つなぎとボールキープが成立しないからだ。前線のボールロストはカバーできるが、後方のそれは致命傷になる。攻撃と守備の二者択一で守備を犠牲にする監督はいないだろう。
2つ目は競争力不足。
14人の登録人数で12人が招集されるのだから、ほぼ毎週試合に出られる状態である。これまでは態度が悪かった者を招集外にして反省を促す“愛の鞭(むち)”が使えたが、今季は使えない。スペインの子供たちは大人の言うことは聞かないが、サッカー少年たちへの「招集外」は絶大な効果がある。「お前はちゃんと練習をしなかったから外す」と言えば、涙を流す子も出てくる。生意気なのに純粋なのだ。チームの規律とモラルを維持する最も有効なツールが使えないのは、監督しては痛手だった。
3つ目はAとBでサッカースタイルや扱いが違ってしまった。
2試合の指揮は同時にできないので、サッカー観の違うスクールの校長が指揮することが多かったAチームは、ここで書いたように、蹴るサッカーをすることが多かった(リンク3参照)。子供が戦術の違いに戸惑うことはなかったようだが、練習を指揮している私が試合に顔を出せないのはちょっと可哀想だった。
深刻な選手不足の問題
実はAチームはもっと勝っているのだが、3試合での勝利が認められなかった。首位のチームに初黒星を付け(2−0)、4位のチームに大勝し(5−0)、冒頭に述べたように3位のチームを粉砕したが、いずれも勝ち点3は相手チームに与えられた。
サッカールール上、7人制サッカーの試合は最低7人いれば成立する。しかし、セビージャ市の主催するスクールリーグには「GKをのぞき、同じ子供が3ピリオド連続で出場できない」という特別ルールがある。これは多くの子供たちをプレーさせようという教育的配慮でなされたルールである。試合は12分クオーターの4ピリオド制。そのうち3つの連続出場を禁止するということは、フィールドプレーヤーが最低9人いなければ、つまりGKと合わせて最低10人いないと試合が成立しないということになる。
Aチームの登録人数は14人でそのうち2人が練習に来なくなり、1人を補充したものの、1人が連盟登録チームに引き抜かれて(これはスクールにとっては名誉である)、結局は12人となった。ということは、ケガや病気、あるいは家庭の事情(週末旅行とか里帰り)で2人欠席すればリーチがかかり、3人欠席でもうアウトなのだ。
10人集まったがGKが2人だったので、そのうち1人をフィールドプレーヤーとして送り出さざるを得ずに敗れたこともあった。7人しか選手がおらず、交代人数ゼロで戦った時は勝ったが、もちろんルール違反で失格。失格の場合は相手に3−0での勝利がプレゼントされる。こうしてAチームは3勝(得点15、失点1)だったはずが3敗(得点0、失点9)となって6位に低迷してしまったわけだ。Bチームが失格とならなかったのは、たまたま協力的な家庭が多かったのと、長期欠席者がおらず、ケガや病人が少なかったからだ。