- 室井昌也
- 2017年3月10日(金) 12:15
代表に対する忠誠心の変化か?

2013年の第3回大会ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に続き、今回も1次ラウンドで敗退した韓国代表。その原因について韓国では「選手から必死さが見えない」との指摘が少なくない。それは代表チームを率いるキム・インシク監督(69歳)も同じ思いだった。
初戦のイスラエル戦に敗れた翌日。オランダ戦を前にして閑散としたグラウンドでキム監督は筆者を手招きして呼び、せきを切ったように話し始めた。
「以前ならば“KOREA”と入ったユニホームを着れば、それを意気に感じて何が何でも勝とうとしたものだ。しかし今は違う。選手は無理をしない。年俸がどんどん上がってみんな豊かになってしまったからだろうか」
02年のアジア大会(釜山)で代表チームの監督を務めて以来、WBCでも第3回を除き監督を務めてきたキム監督は、かつて代表選手の誰もが韓国国旗の下に忠誠を誓った当時との違いを嘆いた。しかしその変化は韓国の野球リーグが成熟してきた証しでもある。キム監督にそう問いかけるとこんな言葉が返ってきた。
「日本はリーグが成熟していても代表チームが団結しているではないか」
精神論だけでは通用せず
しかし日本もそうではなかった時期があった。第3回WBCを翌年に控えた12年、日本プロ野球選手会はMLBとの利益分配が不合理だとして大会への不参加を表明している。その後、代表チーム常設化という発展を経て、現在の姿が確立した。
韓国はキム監督が求めるような「代表チームのためなら何でもする」というような精神論で今までは成立していたが、代表チームのシステムが明確ではない中で、それを維持するのは難しい時期に差し掛かっている。
一方で「選手の意識は昔も今も同じ」と第1回大会で活躍し、昨季限りで引退した元中日のイ・ビョンギュ氏(42歳)は言う。「みんな体が仕上がってないんだよ」。そう言って大会開催時期の問題を指摘し、選手たちをかばった。