PSGを封じ込めたバルサの3−4−3 ゴール以上に美しかった諦めない姿勢
史上初となった4点差からの逆転
6点取って勝つことを信じて疑わなかったバルセロナが、4点差を逆転してベスト8進出を決めた 【Getty Images】
言葉の意味はよく分からないが、とにかくすごい自信だ。そして、その通りになってしまった。2016−17シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦、バルセロナ対パリ・サンジェルマン(PSG)は、第1戦の0−4から、まさかの大逆転。現地時間3月8日に行われた第2戦はバルセロナが6−1で勝利し、2試合合計6−5でベスト8進出を決めた。
4点差を跳ね返したのはCL、さらに前身のチャンピオンズカップを含めても史上初となる快挙だ。『カンプ・ノウの奇跡』と言えば、1998−99シーズンの決勝、マンチェスター・ユナイテッド対バイエルン・ミュンヘンで、ユナイテッドが後半アディショナルタイムに2ゴールを奪って逆転優勝を果たした試合を思い出す。
そして今回もアディショナルタイムの2ゴールで、試合がひっくり返った。『カンプ・ノウの奇跡』に新たな1ページが刻まれた瞬間だ。
ルイス・エンリケは「4点取れる」と言わず、「6点取れる」と言った。アウェーゴールの1点を返されることは覚悟しなければ、大量スコアは難しいと考えたのだろう。夢と勇気を見せた試合だったが、一方で「6点取れる」発言は、現実感をくゆらすものでもあった。
その気持ちが乗り移ったのか、残り10分で3−1(2試合合計3−5)という絶望的な状況でも、集中を切らさずにビッグセーブを続けたマルク・アンドレ・テア・シュテーゲン、そして後半43分に反撃の狼煙(のろし)となるFKを決めたネイマール。6点取って勝つことを信じて疑わなかった、彼らの姿勢こそ、ゴール以上に美しい。目の保養になった。
バルセロナの勝因は前に人数をかけたこと
バルセロナの第1戦との最も大きな違いは、3−4−3の布陣で前に人数をかけたこと 【Getty Images】
前に人数をかけることで、コンパクトさが売りのPSGのディフェンスに後手の対応をさせ、深い位置へ押し込む。これが第1戦との最も大きな違いであり、逆転を果たした要因だろう。
押し込んで勝負すれば、奪われたボールを高い位置で奪い返せる。前に人数をかけているので、プレッシングの密度も高い。また、この日のPSGのディフェンスはペナルティーエリア内のゴール近くに下がって守備をする場面が多くなったため、こうなると事故も起きやすい。前半3分にルイス・スアレスがクロスのこぼれ球を押し込んだ先制点が、その典型的なシーンだ。競り合う位置をできるだけゴールから遠ざけたいが、3−4−3のバルセロナに押し込まれたPSGには、それが許されなかった。
また、このバルセロナの戦術は、第1戦で見せたPSGの強みを消した。それはエディンソン・カバーニだ。この献身的な守備をいとわないFWは、1トップだが、かなり中盤の守備を助けてくれる。バルセロナが中盤を4枚に増やしても、すぐに破綻することがなかったのは、カバーニの助けが大きい。
ところが、そうやってカバーニが走り回るため、PSGはボールを奪った瞬間、最前線にFWがいないケースが起こりがちになる。そのため、第1戦では奪ったボールをマルコ・ベラッティやブレーズ・マテュイディ、アドリアン・ラビオらがポゼッションして、一度カウンタープレスをかわし、FWのカバーニ、ユリアン・ドラクスラー、アンヘル・ディ・マリアが高い位置へ上がる時間を作る。それから、一気に縦にスピードアップ。つまり、ダイレクトカウンターではなく、セカンドカウンターといったところだ。第1戦はこの形がハマった。
しかし、第2戦は前述したようにPSGのボールを奪う位置が低くなったため、カウンタープレスにかかりやすく、バルセロナの選手たちのコンディションもはるかに良かった。PSGの一度かわしてから……のポゼッションがままならない。こんな状況なら、一発蹴って収めてくれるズラタン・イブラヒモビッチ(マンチェスター・ユナイテッド)やロベルト・レバンドフスキ(バイエルン)のようなタイプを置いて、ハイボールを徹底した方がいい。
バルセロナの3−4−3は、多方面でPSGを封じ込めたのだ。