バルセロナに見られるプレーモデルの欠如 張り詰めた空気に包まれたカンプノウ

先週はバルセロナにとって厳しい一週間に

バルセロナはCL決勝トーナメント1回戦でPSGに0−4の大敗を喫した 【Getty Images】

 現地時間2月19日、カンプノウで行われたレガネス戦のラスト数分は、フランク・ライカールトがバルセロナの新監督に就任する少し前、いら立ちと不満に包まれた失意のシーズンが終わりを迎えようとしていた頃によく似ていた。

 バルセロナは先週、極めて厳しい一週間を過ごした。14日のチャンピオンズリーグ(CL)でパリ・サンジェルマン(以下、PSG)に予期せぬ大敗を喫し、シーズンの大きな目標の1つを失うことが濃厚となったからだ。

 9シーズン連続でCLベスト8以上の成績を残してきたクラブにとって、決勝トーナメント1回戦での敗退は全くもって想定外の事態である。だが、アトレティコ・マドリーに準々決勝で敗れた昨季に続いての早期敗退より深刻なのは、チームが長らく露呈してきたイメージにある。

 随分前から指摘してきたことだが、今のバルセロナには先発に名を連ねる素晴らしい選手たちを支えるチーム戦術がない。また、戦力的に全てのポジションをバランスよくカバーできておらず、主力メンバーの代役が務まるバックアッパーが不足していることも問題となっている。

必要なのは高度な連係プレーや組織力だが……

レアル・マドリーやバイエルン・ミュンヘンなどトップレベルのライバルを上回るには個々のタレントだけでは不十分だ 【写真:ロイター/アフロ】

 パリでPSGに0−4と大敗したことにより、バルセロナが例年より早くリーガ・エスパニョーラの首位争いに集中できるようになったことは確かだ。ただ、14節を残した現在、リーガでは1試合未消化の首位レアル・マドリーに勝ち点1差を付けられており、4月には敵地サンティアゴ・ベルナベウでの“エル・クラシコ”(伝統の一戦)も控えている。逆転優勝の条件は険しいが、2位の座はバルセロナにとって大きな意味を持たない。

 バルセロナとレアル・マドリーはスペインの他クラブが対抗不可能なほど、高額なスター選手をそろえている。それはこの2クラブが元々有している桁違いの資金力に加え、他クラブとの間にあるテレビ放映権収入の格差も一因となっている。

 それでもシーズンの山場を迎えた今、バルセロナはウナイ・エメリ監督率いる強固なPSGのみならず、レアル・マドリーやバイエルン・ミュンヘン、トッテナム、チェルシー、マンチェスター・シティ、ユベントスといった強豪との対戦においては深刻な問題を露呈する可能性がある。

 こうしたトップレベルのライバルを上回るには、個々のタレントだけでは不十分だ。必要なのは高度な連係プレーや組織力であり、目指すプレーモデルを共有することなのだが、ルイス・エンリケの指揮下では全くそれが見えてこない。そのため今になって、しびれを切らし始めたカタルーニャのスポーツメディアは、来季に向けて新監督は誰がふさわしいかのアンケートまで実施するようになった。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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