バルサがCLで目指す前代未聞の逆転劇 エンリケ退任は突破への原動力となるか?

ファーストレグでPSGに0‐4の大敗

PSGとのセカンドレグで、バルセロナは0−4からの逆転を目指す 【写真:ロイター/アフロ】

 現地時間3月8日の20時45分、カンプノウにてバルセロナとパリ・サンジェルマン(PSG)がチャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦で対戦する。パリで行われた22日前のファーストレグはPSGが4−0と圧勝。痛恨の大敗を喫したバルセロナだが、いくつもの重要な出来事が生じたその後の3週間を経て、チームを取り巻く状況は大きく変わってきた。

 バルセロナはリバプールにアウェーゴールの差で敗れた2006−07シーズン以来、CLでは9年連続でベスト8以上の成績を出し続けてきた。はたして今回は4ゴールのビハインドを覆し、早すぎる敗退を逃れることができるだろうか。

 その根拠が両チームの現状以上に過去の実績によるところが大きかったとはいえ、誰もがバルセロナを本命と見ていたことは間違いない。それだけに、ファーストレグで喫したまさかの大敗は、クラブとその周辺に大きな動揺をもたらし、一時はチームも危機的状況に陥った。

ルイス・エンリケが退任を発表

今季限りでの退任を発表したルイス・エンリケ 【写真:ロイター/アフロ】

 直後の国内リーグでは、ホームでレガネス相手に大苦戦(2−1)。終了直前に決勝点となるPKを決めたリオネル・メッシは険しい表情のまま言葉一つ発せず、危機感が伝わってこないチームメートへの不満を露わにしていた。

 さらには3月1日、監督のルイス・エンリケが今季終了時の退任を発表した。

 現役時代と同様に、ゴール裏の応援団は試合ごとにルイス・エンリケをたたえるチャントを送り続けてきた。それでも彼がこのタイミングで退任の意思を公表したことは、妥当な判断だったと言える。CL制覇という大きな目標を早々に失うことが濃厚となった今、彼の決断は、選手たちが自身に向ける不満を鎮める効果が期待できる。それにCL敗退が決まった後では、自身の意思とは関係なく退任を強いられる可能性も高いだろう。

 その反面、あのような形で退任の意思を口にしてしまったことで、これまで抱え込んでいた心身の疲労やストレスが形となって表れる危険もある。彼の指揮下で戦ってきたこの2年半、バルセロナは長期にわたってチームとして素晴らしいパフォーマンスを継続できたことがなく、攻撃面ではメッシ、ルイス・スアレス、ネイマールが並ぶ前線の南米トリオへの依存度を高めてきた。そのことで彼は、常に批判の目にさらされてきたからだ。

1/2ページ

著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント