ロマゴンが激戦を制し4階級制覇を達成 待ち望まれる井上尚弥との運命の一戦
井上も関心「かなりの激戦でした」
4階級制覇を狙ったローマン・ゴンサレス(右)が判定勝利でカルロス・クアドラスをやぶった 【Getty Images】
9月10日、米国ロサンゼルスのザ・フォーラムで行われたボクシングのWBC世界スーパーフライ級タイトルマッチは、リングサイドで見守ったWBO世界スーパーフライ級王者・井上尚弥(大橋)がそう感心したほどの大激戦になった。
3階級制覇王者ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)が鋭い踏み込みと多彩な連打で先手を取れば、このタイトルを保持するカルロス・クアドラス(メキシコ)もフットワークと思い切りの良いカウンターで応戦。ゴンサレスが中盤までのラウンドの大半を制したときには、下馬評通り、4階級制覇を狙った通称“ロマゴン”が後半のストップに持ち込むかと思われた。
しかし、27歳の王者も終盤は逆転勝利を狙ってペースアップ。中南米の2人のライバルたちは、結局はフルラウンドに渡って小気味良い打ち合いを続けていった。
終了のゴングが鳴ると、3人のジャッジは117−111、116−112、115−113のスコアで揃ってゴンサレスを支持。29歳にして46戦全勝(38KO)という戦績を積み上げてきた小さな拳豪は、母国の伝説的英雄アレクシス・アルゲリョでも果たせなかった4階級制覇をニカラグア史上初めて果たした選手になった。
「とても難しいファイト。キャリアで最も難しい試合だった。彼もとても良かったけど、私の方が上だった。私のコンビネーションが違いを生み出した」
試合後のゴンサレスの“難しい”という言葉は、正直な思いの告白だったに違いない。勝ち自体は明白だったが、特に後半にはかなり被弾し、顔面の右側が腫れ上がった。その激しい攻防は、伝統のアリーナに集まった6714人のファンを沸かせるのに十分。2016年の年間最高試合の有力候補にもなるだろう。
ロマゴンも井上戦は「名誉なこと」
現地でロマゴンの試合を“偵察”していた井上尚弥。夢の大一番の実現は? 【杉浦大介】
試合後、このタイトル戦を放送したHBO(米国のケーブルテレビ放送局)のインタビューで井上について聞かれ、ゴンサレスはそう語っていた。一方、9月5日にWBO王座3度目の防衛を果たしたばかりの日本の至宝にとっても、この日の“偵察”は収穫の多いものだったようだ。
「ああいうパターンもありかなと思っていました。スーパーフライ級に上げて、クアドラスがパンチに耐えていたんで、そこは階級の壁が出たのかなと思います」
ゴンサレスの苦戦に驚いたかと聞くと、井上は間髪入れずにそう答えた。そして、自分との戦力比較に関しても、かなり自信に満ちた言葉を残している。
「(ゴンサレスと)やるならスーパーフライ級と思っていた。自分も実力が出せますし、良い勝負ができると思います。スピード面もパワーの面でも、互角ではあると思う。あとは耐久性とか、そこはまだ自分もプロのリングでは試されていない部分があるんで、やっぱり不安要素はありますけど……。それもふまえて良い勝負はできると思います」
ゴンサレス本人も苦闘を認めていた通り、クアドラス戦ではこれまでのキャリアを通じて見せてきた“ロマゴン”の圧倒的な強さは感じられなかった。階級を上げるごとに、パワーの効果が目減りするのは必然。瞬発力と運動量への依存が大きい軽量級選手だけに、さすがのゴンサレスも29歳にしてフィジカル面でやや下り坂とも推測できる。最後の数ラウンドはやや失速したことまで含め、スーパーフライ級でなら付け入るスキは十分にあると井上が感じたとしても理解できるところではある。