ロイヤルズ、好調の理由はカマキリ!? プレーオフ進出へ選手もファンも験担ぎ

菊地慶剛

カマキリの飼育法を一晩リサーチ

カマキリの人形を帽子に付けて応援するファン 【Getty Images】

 きっかけは8月6日(現地時間)に本拠地で行われていたブルージェイズ戦での出来事だった。昨シーズンはリーグ優勝決定戦を戦った強豪チームで、今シーズンはそれまで4戦4敗とまったく歯が立たなかった。

 そんな試合中、ベンチで待機していたビリー・バーンズ選手の帽子にカマキリが飛びついたのだ。周りの選手たちはその珍客を当初は単にからかっていただけなのだが、その試合に勝てたことで、面白がって飼い始めたところ、そこからチームは5勝1敗と急浮上したのだ。しかもカマキリが不運にも死んでしまった8月13日の試合(ツインズ戦)に、チームも負けてしまったのだ。

 この話はまだまだ続く。幸運のカマキリを遠征先のミネソタで失ったロイヤルズは、続いてデトロイトでタイガースと戦うことになっていた。そして試合中に再びロイヤルズのベンチに別のカマキリが出現し、発見者のアルシデス・エスコバル選手、エディンソン・ボルケス投手の2人がファンの力を借りながら必死に捕獲に成功。こちらのカマキリも同様に御利益があるようで、チームの勢いはそのままとどまることはなく、現在に至ったというわけだ。

 現在の2代目カマキリは“カマキリ神話”の生みの親ともいえるバーンズが大事に管理しているらしい。

「最初のカマキリは捕まえた段階で死にかけていたんだ。(2代目は)とにかく少しでも長く生きてくれるようにしたいんだ。どうやって飼うことができるか一晩リサーチしたよ」

屈強な選手が見せる微笑ましい姿

 こうしたエピソードがメディアを通じて紹介されたことで、ファンもすっかりカマキリの信奉者になっていた。筆者がボストンで目撃したように、カマキリを身にまとったファンが次々に現れ、今やカンザスシティの大きなトレンドにまでなっているようだ。

 ネット検索でカマキリの寿命を調べたところ、うまく飼うことができれば1年近くは生きるという。このまま順調ならば2代目がシーズン終了まで生き続けていくことになるだろう。

 今回はカマキリだったが、実はメジャーリーグでは時々こうした縁起担ぎの面白エピソードが登場する。有名なところではエンゼルスの「Rally Monkey(追い上げモンキー)」だろう。2002年にワールドシリーズを制覇したシーズンは、電光掲示板に飛び跳ねるサルが登場すると、サルのぬいぐるみを片手にファンが異様な盛り上がりを見せ、一大現象を巻き起こしたものだった(この応援スタイルは現在も続いている)。

 レギュラーシーズンも残り1カ月を切った。ロイヤルズを含めプレーオフ争いを続けるチームによる本当の意味でのラストスパートがまさにこれから正念場を迎える。その中で、屈強の男たちがちょっとしたことで験を担ぎ、皆で一心不乱に信じ込む姿は多少滑稽でもあるが、裏を返せば162試合という長いシーズンを戦い抜き、チーム一丸となって勝ち残っていくにはそれ相応のパワー、情熱が必要ということでもあるのだ。

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著者プロフィール

栃木県出身。某業界紙記者を経て1993年に米国へ移りフリーライター活動を開始。95年に野茂英雄氏がドジャース入りをしたことを契機に本格的にスポーツライターの道を歩む。これまでスポーツ紙や通信社の通信員を務め、MLBをはじめNFL、NBA、NHL、MLS、PGA、ウィンタースポーツ等様々な競技を取材する。フルマラソン完走3回の経験を持ち、時折アスリートの自主トレに参加しトレーニングに励む。モットーは「歌って走れるスポーツライター」。Twitter(http://twitter.com/joshkikuchi)も随時更新中。

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