ファンに愛されるマリナーズ・李大浩 控え起用も勝負強さ武器に結果を残す

菊地慶剛

脚光を浴びた代打サヨナラ弾

4月13日に代打サヨナラ弾を放った李(写真中央)。これをきっかけに勝負強さを発揮し、ファンにも愛されるようになった 【Getty Images】

 5月13日(現地時間)に地元シアトルでマリナーズ対エンゼルス戦を取材に回った時のことだ。

 中継ぎ投手の不振もありマリナーズが6対7で逆転負けを喫した試合だったのだが、球場に集まった3万5000人近くのファンが最も盛り上がったのが5対3の7回に李大浩選手が代打で登場した場面だった。この日が今シーズン初のマリナーズ取材だったのだが、開幕から2カ月足らずしか経過してないのに、李がすっかり地元ファンから愛される存在になっているのが理解できた。

 現在の境遇は控え一塁手として代打起用が多い。先発機会は主力一塁のアダム・リンド選手が左打者のため、左先発の時に限られている。それでもその人気ぶりは主力選手以上の盛り上がりを見せている。

 きっかけは4月13日に本拠地で行われたレンジャース戦だろう。同点の延長10回に代打で登場し、新人選手としてチーム史上初の代打サヨナラ本塁打を放ったのだ。それ以前は12打数2安打と決して注目を集める存在ではなかったが、これを機に一躍脚光を浴びたことで、彼の野球人生も広く地元ファンに知られることになり、一気にファンに迎え入れられた。

「自分は33歳のベテラン選手だけど、ここではただの新人選手。そんな自分の野球人生をファンが知ってくれたことで、応援してくれるようになったんだと思う」

 今回初めて李のインタビューを行ったのだが、190センチ、110キロを上回るメジャーでも十分な体型とは不釣り合いなほど、恥ずかしそうにとつとつと喋る姿に驚いた。日本でも昔から愛され続けた人気力士のようなキャラクターも、ファンに愛される人気の一つなのかもしれない。

「今は野球を楽しんでいる」

 昨シーズン終了後に2年契約が切れ、古巣の福岡ソフトバンクからは複数年の高額年俸で残留要請を受けていた。それでも自分の夢であるメジャー挑戦の夢を捨てきれず、マリナーズとのマイナー契約を選んだ。招待選手としてメジャーキャンプに参加した当時は、リンドをはじめ一塁候補はあふれており、李の開幕メジャー入りを予想するメディアは誰もいなかったと思う。オープン戦でも打率2割6分4厘、本塁打も1本に留まるなど、自慢の長打力を披露できたわけではなかったが、チーム内での価値を認められ、キャンプ中の3月27日にメジャー昇格の最低条件となる40人枠入りを果たし、そのまま開幕メジャーの座を勝ち取った。

「今はとにかく野球を楽しんでいる。もちろんこれまで毎日試合に出場していた選手なので、毎日プレーできる準備ができていながら出られないのはストレスな部分もある。でもこのチームでは自分はベンチ選手なのは理解している。その分時間があるからしっかり練習もできるからね」

 長年夢見たメジャーの舞台に立ち、李は心からメジャー生活を満喫しようとしている。その一方で本人が話すように、時間を無駄にせずしっかり練習に費やしている。チームの打撃練習中でも自分の打撃時間以外は一塁に入りノックを受け続ける光景を目撃している。

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著者プロフィール

栃木県出身。某業界紙記者を経て1993年に米国へ移りフリーライター活動を開始。95年に野茂英雄氏がドジャース入りをしたことを契機に本格的にスポーツライターの道を歩む。これまでスポーツ紙や通信社の通信員を務め、MLBをはじめNFL、NBA、NHL、MLS、PGA、ウィンタースポーツ等様々な競技を取材する。フルマラソン完走3回の経験を持ち、時折アスリートの自主トレに参加しトレーニングに励む。モットーは「歌って走れるスポーツライター」。Twitter(http://twitter.com/joshkikuchi)も随時更新中。

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