【侍ジャパンU-18代表・小倉全由監督インタビュー①】名将が「9人の中に1人は必要」と掴んだ”確信”と国際大会で勝つために挙げた数々のポイント
【©BFJ】
侍ジャパンU-18代表はスーパーラウンド初戦まで4連勝を飾り決勝に進出。4連勝目を飾ったチャイニーズ・タイペイと再び対戦し、惜しくも敗れるも準優勝の成績を収めた。
この7日間は、打撃技術で感じたことや今後日本が世界で戦う中で必要なことなど、気づきと確信を得た期間になった。
代表として戦った期間を振り返るべく、チームの指揮官を務めた小倉全由監督(前日大三高監督)に話を伺った。全3回に分けてお送りする。
打撃で小倉監督が感じた”違和感”とは?
しかしここでは、チャイニーズタイペイ・韓国と対するも、2試合で1得点と打線が相手投手陣に抑えられるシーンが目立った。
実は、その前から小倉監督はある違和感を感じていた。
「自分が感じたのは、選手たちがスイングするときにバットが体から離れていたんですよ。もしかしたら、フライボール革命などでスイングが違ってきたのではないのかと。
大谷翔平選手らが高校生だった当時(12年)に世界選手権で監督をしていた時には、バットの出方に違和感を感じなかったんです。でも今回はすごく感じたんです」
違和感が残った小倉監督は帰国後、指揮を執っていた日大三高時代の映像を見直したという。
「そしたら、体から離れて振ってる選手はいなかったんですよ。やはり、正しいバットの軌道というのはあるよなと感じました」
ただ、チャイニーズ・タイペイと再び相対した決勝戦では、10安打と打撃陣が盛り返していた。その要因は決勝前の練習にあった。
「決勝戦の前には選手たちがティーバッティングの時にバットの出方を意識してきたんです。
自分たちが打てなかったと感じたんじゃないかなと思います。韓国とチャイニーズ・タイペイの投手の球は速かったですから。それを踏まえて、次の試合はどうしたらいいのかと自分たちで考えて変わったんです。
練習の中では『バットの出方はこうだよ』・『こうヘッドを走らせるんだよ』などと伝えてはいましたが、この短期間で今までのバッティングスタイルを変えるというのは難しいですよね。
でも、自分がティーバッティングを見てからあの試合で変わったと感じましたし、選手たちの意識は私にも伝わってきました。実際、2試合ヒットがほぼ出なかったのが、最終戦は10本も出てくれたわけですから。
選手たちが自ら考えて打撃を見直した 【©BFJ】
「広陵の濱本(遥大)くんと明徳義塾の山畑(真南斗)くん。あの小柄な2人(※)が、ヒットをよく打っているんです。
濱本選手が表彰されて帰ってきたから『濱本それ何の表彰?』って聞いたら『首位打者です!』って言われてそうか!と。嬉しくなりましたよ」
(※濱本は172cm / 70kg・山畑は165cm / 58kg)
濱本は19打数12安打でなんと打率.632、山畑も8打数4安打の打率.500。決勝でもそれぞれ3安打、1安打と結果を残した。
大会首位打者に輝いた濱本 【©BFJ】
本大会で改めて掴んだ”確信”
「私は当初、山畑くんは内野をどこでも守れるということで選びました。仮にヒットが出なくても、山畑くんであれば堅実な守備で凌いで、バントなどで繋いでくれるなと。しつこく粘れる選手ですし、塁に出れば走ってもくれますから。
彼の活躍を見て、自分が指揮を執る中で『こういう選手が9人の中に必ず入れないといけないな』と確信したんです」
打撃だけでなく、守備・走塁でも力を発揮した山畑 【©BFJ】
しかし百戦錬磨の名将はそのまま踏襲するのではなく、対戦相手や大会に合わせた野球を展開できるようメンバーを考え抜き、チーム作りを行っていた。
「1点取るのにはバントもあれば、犠牲フライもありますよね。去年馬淵さん(史郎:明徳義塾監督)がワールドカップで優勝しましたが、大柄な選手を選ばなかった。
私は野球にはスモールもビッグもないと思うので、”スモールベースボール”という表現は好まないのですが、大会では7イニング制でかつヒットもそう多くは出ない。
そうなれば走者を送るところは送る。必ず1点取らないといけない場面では確実に取りに行く。それが必要と考えていました」
本大会では”1点を取りにいく野球”を展開した 【©BFJ】
「相手がエラーや四球を出した時にこちらもバントやエンドラン、あとは盗塁を仕掛けていきました。
今回は濱本くんと山畑くんには『塁に出たらノーサインで走っていいよ』と伝えていて、二盗・三盗と決めてくれた。なので、こういう選手が必要なんだと感じましたね。
盗塁できる選手がいるというのは、こんなに助かることはないわけですよ。自分も甲子園でやっていて、勝っている時はそういう選手もいましたから」
投手選考で必要な「野手としても戦力となる選手」
「やっぱり投手ですよ。球数制限もあったので(全18選手の中)8人選びましたから。
特に先ほど話した上位2国との勝負が一番の山場になることは想定していましたし、相手も力があっていい投手ばかりでした。でも、投手戦だったら負けないと思っていました」
スーパーラウンドで勝利投手となった坂井 【©BFJ】
本大会では、通常行われている野球のルールとは異なる点があった。今後国際大会を戦う上で、経験し感じたことを語った。
「7イニング制だったのですが、9イニングの野球をやっていた自分からすると、イニングが少ない中でも難しさは正直ありましたね。
4回終わったらもうすぐ終わるような感覚ですから。ただ、4回でリードしていたら”これ行けるぞ”と、そんなイメージですよ。球数制限もあるので継投のタイミングもポイントになってきます」
その投手選考において、野手同様に特徴を持った選手を選ぶ必要があると感じた小倉監督。限られた枠の中で世界を戦う上で必要な選考ポイントを説いた。
「投げない時は守れる。また、打つ方でも中心を任せられる選手を2人は必要だなと。野手としても戦力になってくれる、そういう選手を選ばないといけない。
来年ワールドカップの監督を務めるのですが、投手の中で2人くらいは投げても打ってもやれる選手をしっかりと選ばないといけないと考えています」
スーパーラウンドではDHで出場した櫻井 【©BFJ】
U-18世代が今後世界で勝つには?
小倉監督にそのことを問うと、まず野手について述べた。
「攻撃面では150km/h以上の速球に負けない選手が必要です。後は塁に出た時に相手のミスに付け入って得点圏に進める走塁ができる選手。
それとやはり守備力。エラーが出たら負けに直結しますから。日本の選手はよく守っていましたよ」
堅実な守備が日本の持ち味の一つと語る 【©BFJ】
「投手はまずはコントロールです。球数制限があるので無駄な球を投げないことです。そういう選手が計算できますから。
それと変化球をしっかり投げられる投手。三高で監督していた時に自分が見ていて一番嫌だなと思った投手は、変化球を柔らかくスムーズに投げる投手なんです。
球速が少し遅くてもコントロールが良くて、変化球をしっかりと低めに投げられる投手というのが一番攻略が難しいですから」
国際大会を戦う上で必要なことを語ってくれた小倉監督。試合以外においても大会期間で感じた、アジアの野球の違いがあったことを語った。
※中編へ続く
(取材 / 文:白石怜平)
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