元ロッテ中後、メジャー昇格へ奮闘中 NPB戦力外からのシンデレラストーリーへ

菊地慶剛

本人も戸惑いの中でのキャンプ

左腕不足のMLBダイヤモンドバックスとマイナー契約を結んだ変則サウスポーの中後。“左キラー”としての活躍を期待されている 【写真は共同】

 TBS系列で毎年放送されている『プロ野球戦力外通告・クビを宣告された男達』は、今や年末の人気特番として定着している。筆者も選手たちの悲喜こもごもの人生模様に毎年引き込まれている1人だ。

 昨年の放送で登場した1人、千葉ロッテから戦力外通告を受けた中後悠平投手をご記憶だろうか。番組内では合同トライアウト受験後もNPBから契約のオファーが届かず、NPB復帰を目指しBCリーグの武蔵ヒートベアーズと契約したところまでが紹介されていた。が、しかし、中後は現在、海を渡り米国アリゾナ州にいるのだ。

 すでに複数のメディアが報じているように、放送後の中後に信じられないような出来事が待ち受けていた。なんとメジャー3チームから契約オファーが届き、最終的にその中からダイヤモンドバックスとマイナー契約を結ぶことになったのだ。ビザの取得が遅れたため3月の通常キャンプに参加することはができなかったが、6月からシーズン開幕を迎える若手選手たち(いわゆるルーキーリーグなどの下部リーグは6月から3カ月間の実施になっている)に混じり、アリゾナにある同チームのキャンプ施設でちょっと遅めのキャンプを過ごしているのだ。

「正直まだ右も左もわからない状態です。今まで野球をするためアメリカに来たこともなかったですし、1月の時に(ここで)やるとも思っていなかった。言葉が通じないだけで野球をすることがこんなにも難しいのかと思います」

 まだアリゾナ入りした当初は、たった数カ月の間に起こった急転直下の展開に、中後本人も戸惑いを隠せない状態だった。だがキャンプを過ごしながら着実に準備を進めている。

左不足のDバックスとマイナー契約

 もちろん日本の合同トライアウトでさえ興味を持たれなかった選手が、マイナー契約ながらもなぜメジャー球団と契約できたのか、不思議に思うかもしれない。ここで断言しておくが、資金力豊富なメジャーといえども、26歳の元プロ野球選手をマイナーでやらせるためだけに契約したりなどしない。ダイヤモンドバックスは中後にメジャーでやれる可能性を見出したからこそ、彼との契約に踏み切った。その辺りの説明をスカウトからきちんと受けていたこともあり、中後は3チームの中からダイヤモンドバックスを選んだのだ。

「野球を諦めかけていた中でこういう話をもらった時は正直うれしかったです。自分で調べた中で(ダイヤモンドバックスは)左ピッチャーの補強に失敗していて左不足だというのがわかった。チームからも僕のような左投手が欲しいと言ってもらえた。そうやって必要としてもらえるところにいけば、チャンスももらえるんじゃないかと思いました」

 中後の説明してくれた通り、現在のダイヤモンドバックスの左中継ぎ陣は決して盤石とはいえない。開幕から唯一の左の中継ぎ投手だったアンドリュー・チャフィン投手が防御率6点台と結果を残せず。先月30日に急きょ1Aからザック・カーティス投手を昇格させた。しかもメジャー昇格の最低条件となる40人枠にも左の中継ぎ投手はこの2投手以外1人だけ。まさにチームは左の強打者と対峙させたい“左キラー”として横手投げ左腕の中後に着目したというわけだ。

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著者プロフィール

栃木県出身。某業界紙記者を経て1993年に米国へ移りフリーライター活動を開始。95年に野茂英雄氏がドジャース入りをしたことを契機に本格的にスポーツライターの道を歩む。これまでスポーツ紙や通信社の通信員を務め、MLBをはじめNFL、NBA、NHL、MLS、PGA、ウィンタースポーツ等様々な競技を取材する。フルマラソン完走3回の経験を持ち、時折アスリートの自主トレに参加しトレーニングに励む。モットーは「歌って走れるスポーツライター」。Twitter(http://twitter.com/joshkikuchi)も随時更新中。

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