元捕手右腕ジャンセンが前田の命運握る 適応力の高さでMLB屈指の守護神に

菊地慶剛

ドジャースの守護神を務めるケンリー・ジャンセン 【Getty Images】

 今季から前田健太投手が在籍するドジャースで長年クローザーを務めているのがケンリー・ジャンセン投手だ。

 現在(現地時間5月16日)まで13回のセーブ機会に登板し失敗はゼロ。しかも防御率は0.59と圧倒的な投球を続けている。入団前に右ヒジにイレギュラーな部分が見つかり、ここまで好投を続けながらも100球前後の球数制限が続く前田の勝ち星の行方を左右する存在が、まさにジャンセンなのだ。

 そんなドジャースの守護神ジャンセンが、実はスイッチヒッターだということをご存知だろうか。もちろんシーズンを通して基本的に1イニング限定のクローザーが打席に立つことはほとんどあり得ない。それを物語るように、2012年シーズンの途中でクローザーに抜擢される以前も含め、昨年までメジャー在籍6年間で打席に立ったのはたった4回しかないのだ。

 なんとなく宝の持ち腐れ(?)のようなスイッチヒッターではあるが、ジャンセンが両打ちを選んだのには理由がある。たぶんメジャー通の人にとっては有名なエピソードだと思うが、彼は元々ピッチャーではなくキャッチャーだったのだ。しかもオランダ領アンティルのキュラソー島出身のジャンセンはオランダ代表として09年の第2回WBCにも捕手として出場を果たしているのだ。

09年シーズン途中に捕手から転向

 確かにメジャーで活躍する選手の中で“転向組”は珍しくない。野手から投手に転向しナックルボーラーとして活躍したティム・ウェークフィールド氏、また一度は投手としてメジャーで成功しながらも野手に転向したリック・アンキール氏らが有名だが、彼らはあくまで自分の意志で転向を決めている。しかしジャンセンの場合、突如としてチームから投手転向を言い渡された特殊なケースなのだ。それはWBCに出場した09年のシーズン途中の出来事だった。

「09年の6月だったと思う。3Aにいた時にチームからピッチャーをやってみろと言われたんだ。自分としてはWBCにも出場したし、捕手として頑張ろうとやっていた時だったからね。それまでピッチャーなんてやってことは一度もなかった。リトルリーグの時に何回かやったことがある程度だったんだ。もちろん驚いたし、戸惑ったよ」

 だが当時21歳だったジャンセンの決断は早かった。

「まだ若かったし、考え方もオープンだった。それにチームから言われたことだからね。従うしかない。チームから転向を言い渡されたのがお昼ぐらいだったかな。でもその4時間後には家族と相談したりして、とにかくピッチャーをやってみようと決心したよ」

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著者プロフィール

栃木県出身。某業界紙記者を経て1993年に米国へ移りフリーライター活動を開始。95年に野茂英雄氏がドジャース入りをしたことを契機に本格的にスポーツライターの道を歩む。これまでスポーツ紙や通信社の通信員を務め、MLBをはじめNFL、NBA、NHL、MLS、PGA、ウィンタースポーツ等様々な競技を取材する。フルマラソン完走3回の経験を持ち、時折アスリートの自主トレに参加しトレーニングに励む。モットーは「歌って走れるスポーツライター」。Twitter(http://twitter.com/joshkikuchi)も随時更新中。

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