Rソックス・上原、代役クローザーで躍動 再び“伝説の秋”の主役になれるか!?

杉浦大介

好調維持には速球こそが鍵に

女房役のレオン(左)も上原の持ち味を理解している 【Getty Images】

 今後の注目は、疲れの出る夏場以降も上原がこの調子を保てるのかどうか。キンブレルが復帰し、セットアッパーか中継ぎ役に戻った後も力を維持できるのか。そして何より、上原本人が述べていたスプリッターへの不安は解消されるのかどうか……。

「コウジの球を去年から受けているけど、過去4戦では直球を中心にしている。彼の最高の武器はスプリッターだとわかっている。だからこそ、速球を上下に散らすことが鍵。彼のスプリッターは素晴らしくて、三振が取れる。真っ直ぐを有効に使うことでそれが余計に生きてくるんだ」

 17日の試合後、サンディ・レオン捕手は2つの球種を投げ分ける大切さを強調していた。“魔球”と呼ばれた球種の威力が戻れば素晴らしい。それが叶わないなら、真っ直ぐを丁寧に投げてコンビネーションで勝負する。スプリッター同様、速球のキレ、精度を保つことが今後も重要になってくることは言うまでもない。

完全復調すれば13年の再現も

「スプリッターの切れ味は以前ほどではない。おかげで真っ直ぐ、スプリッターの両方ともコントロールミスしたときに捉えられる確率が高まっている。被本塁打が多いのはそれが理由だろう。打者が打ち損じる可能性が低くなっているんだ」

 ア・リーグ某強豪チームのスカウトに尋ねると、やはりそんな答えが返ってきた。それでも、日頃から上原を高く評価するこの人物に、“依然として獲得したいと思える選手ですか?”と訊くと……彼はこう即答した。

「大舞台でも力が出せる上原はこの時期には魅力だ。獲得は現実的ではないが、手に入れるチャンスがあるとすれば、依然として“ゴー”のサインを出す投手だよ」

 まだ記憶に新しい13年秋。プレーオフ通算13試合で防御率0.66という驚異的な活躍を続け、上原はレッドソックスの世界一の立役者になった。あれから3年が過ぎ、メジャーを代表する名門チームがポストシーズンの舞台に戻ってくる可能性は低くない。ここに来てのトレードなどは考え難く、緊張感と寒さで凍りつくような場面で上原が再びボストンのマウンドに立つチャンスはあるだろう。

 ほぼすべてが完璧だった13年ほどの内容ではなくとも、海千山千のベテランが復調すればレッドソックスにとっては大きい。オールスター明け2戦の投球内容は、今後を期待させるに十分だった。そんな背番号19を見て、まるでデジャヴュのように、あの“伝説の秋”に想いを馳せているボストニアンは多いに違いないのである。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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