イチロー、過酷な遠征を経て代打で二塁打 3000安打まであと10本

丹羽政善

現在とは比較が難しい三塁打記録

メッツ戦で二塁打を放ち、3000安打まであと10本としたイチロー 【Getty Images】

 さて、ここ数日のイチロー。2日にアトランタで行われた試合では、40度近い炎天下の中、「1番・ライト」でフル出場。2打席目には、センターオーバーの三塁打を放ち、日米通算ながら三塁打の数を115本(日本23本、大リーグ92本)として、福本豊氏が持つ通算三塁打の日本記録に並んだ。
 
 三塁打の大リーグ記録は、1899年から1917年までプレーしたサム・クロフォードの309本で倍以上の開きがあるが、彼を含め、上位の記録は球場が広かった1900年代初めのもの。レッズ時代にクロフォードが本拠地としていた「パレス・オブ・ザ・ファンズ」という球場の右翼は450フィート(約137.2メートル)もあり、左打ちのクロフォードにとっては有利だったと想像できる。クロフォードはその後タイガースへ移籍するが、本拠地「ネビン・フィールド」のセンターはなんと467フィート(142.3メートル)もあった。
 
 となると、やはり今の記録との比較が難しい。イチローが11年半プレーしたセーフコ・フィールドも広い方だが、それでもセンターまでは405フィート(約123.4メートル、2013年から401フィートに変更)。ネビン・フィールドとは約19メートルの差があるのである。

 ちなみにイチローが大リーグで放った92本の三塁打は、01年以降では、カール・クロフォード、ホセ・レイエス、ジミー・ロリンズに次いで第4位。イチローは11年、「僕、(三塁打は)そんなに多くないもん」と話したことがあるが、決して少なくはないと言えそうだ。

マーリンズは6点リードから逆転負け

 話をこの日――4日のメッツ戦に戻せば、イチローは8回表、先頭打者として代打の打席に立つと、2ストライクと追い込まれてからの4球目を右中間に運んで二塁打を放った。

 同点とされた直後の回。マーリンズとしてはこのヒットで流れを引き戻せるか、というところ。続くJ.T.リアルミュートが四球で歩くと無死一、二塁となったが、これが結果的にはあだとなる。2番のマーティン・プラドが一塁前にバントをしたが、これがダッシュしてきた一塁手の正面。イチローは三塁でフォースアウトとなり、プラドも一塁でアウト。最悪のダブルプレーだった。

 その裏、メッツはヨエニス・セスペデスが2死一、二塁のチャンスで走者一掃の二塁打を放って勝ち越し。中盤以降の勢いの差がそのまま出た。

 マーリンズとしては、フェルナンド・ロドニーをトレードで獲得して勝ちゲームの継投を完璧にしたはずだったが、このところ、デービッド・フェルプス、守護神のA.J.ラモスにも疲れが見え、今日はロドニーが打たれた。6点差をひっくり返されたこともそうだが、強みのはずのリリーフ陣が崩れ、よりダメージの大きな敗戦となった。

 なお、イチローは、二塁打で大リーグ通算3000安打まであと10本とした。大きなマイルストーンがいよいよ視界に入ってきている。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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