アメリカズカップに向け必要な“時間” バミューダで見えたソフトバンクの課題

中山智

風が弱く、初日のレースはキャンセルに

ワールドシリーズの第3戦がバミューダで開催された 【写真:ロイター/アフロ】

 2017年6月にヨットの世界大会「第35回アメリカズカップ」が開催される。その予選シリーズとなっている「ルイ・ヴィトン アメリカズカップ・ワールドシリーズ」(以下ワールドシリーズ)の第3戦が10月17日から10月18日の2日間にわたって行われた。

 第3戦の会場は、17年の本大会開催地にもなっている北大西洋のバミューダ諸島。「魔の海域・バミューダ・トライアングル」として有名だが、現地は観光業が発展しており、セーリングなどのマリンスポーツも盛んなリゾート地となっている。

 今年、日本からアメリカズカップに参戦している「ソフトバンク・チーム・ジャパン」はこのバミューダがベースキャンプだ。いわばホームポートであり、チームとしてもこのバミューダ大会が3戦目で、参加表明から準備や練習期間がほとんどないままレースに挑んだ第1戦、第2戦とは違った結果が求められている。

 実際、大会前日の16日にはプラクティスレースが行われ、ソフトバンク・チーム・ジャパンはトップでフィニッシュ。風が弱かったことと、参加チームが6チーム中4チームであくまで参考レベルの練習レースだが、第2戦のヨーテボリ大会で2位だったレースも軽風でのコンディションだった。ソフトバンク・チーム・ジャパンの早福和彦総監督は「われわれのチームは、まだ得意風域を語るような段階ではない」とコメントしていたものの、軽風域ならば好成績を期待できるのではと思わせる仕上がりだった。


【協力:America's Cup Event Authority】

 その期待に答えるかのように、大会初日の現地は軽風のコンディション。しかし、風が弱すぎたため、大会で規定されているレース開催の条件「平均6ノット以上(約3m/s)」をクリアできず、予定されていた2レースはキャンセルに。ソフトバンク・チーム・ジャパンの軽風域での本気のレースが見られなかったのは残念だ。

 ちなみに、アメリカズカップを含むセーリング競技は、風力のみを推進力として利用するため、風がない状態では動かず、今回のようにレースはできない。逆に強風の場合は危険なため、上限が「25ノット(約13m/s)」と規定されている。

ソフトバンクは艇速が伸びず

良好なコンディションながらソフトバンクは艇速が伸びず、順位を上げられなかった 【写真:ロイター/アフロ】

 翌18日は風速12〜16ノットとアメリカズカップで使用される「AC45」という艇にはピッタリのコンディション。AC45が持っている艇のポテンシャルをいかに引き出せるか、各チームの実力差がものをいう風速域での戦いとなった。また、レースは前日のキャンセルにより全3レースの開催となり、獲得ポイントが倍になる「スーパ−サンデー」が適用された。

 第1レース、スタートでソフトバンク・チーム・ジャパンはスタートラインの最も風上側からタイミングもピッタリのスタート。風下側と比べて第1マークまでは若干距離は長くなるが、風上側に他艇がおらず、フレッシュウインドを受けて艇速を上げられるポジションだ。

 しかし、ここで同じくジャストなタイミングながら最風下側からスタートした、アルテミス・レーシング(スウェーデン)が頭ひとつ抜け出しトップに。バミューダ大会では、アルテミス・レーシングが艇速で高いパフォーマンスを披露した。アルテミス・レーシングは第2レース直前に審判艇と衝突し、艇が破損するトラブルにも見舞われたが、3レースとも艇速を武器に有利なレース展開をしていた。

 一方ソフトバンク・チーム・ジャパンは思うように艇速が伸びず、他艇を引き離せずに第1マークへと突入。風下側のオラクル・チーム・USA(アメリカ)とランドローバー・BAR(イギリス)にマークまでの最短距離から押し出され、一転して不利な展開に。一時5位まで順位を落としたが、中盤では上位グループに食らいついていくというレース展開で、最終的には4位でフィニッシュした。

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著者プロフィール

1974年生まれ。本業はITやモバイル業界をメインに取材・執筆をしているフリーライター。海外取材も多く、気になるイベントはフットワーク軽く出かけるのがモットー。大学在学中はヨット部に所属し、卒業後もコーチとしてセーリング競技に携わっている。アメリカズカップのリポートをとおして、セーリング競技に馴染みのない人たちへヨットの認知度アップを狙っている

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