ヨット最高峰「アメリカズカップ」とは 世界最古の大会に臨むソフトバンクの挑戦
ソフトバンク・チーム・ジャパンが参戦
アメリカズカップ参戦を表明し、戦いを始めているソフトバンク・チーム・ジャパン 【Getty Images】
現在はアメリカズカップ本戦に先立ち、その前哨戦とも言える「ルイ・ヴィトン アメリカズカップ・ワールドシリーズ」(以下ワールドシリーズ)が開催されており、7月に第1戦のポーツマス大会(イギリス)、8月に第2戦のヨーテボリ大会(スウェーデン)を消化。そして2015年のワールドシリーズ最終戦となる第3戦が、現地時間10月17日から北大西洋のバミューダ諸島にて2日間にわたって繰り広げられる。
もちろんアメリカズカップに挑戦しているソフトバンク・チーム・ジャパンも第1戦からエントリーしている。現在ワールドシリーズには、全部で6つのチームが参戦。ソフトバンク・チーム・ジャパンは参加表明が2015年4月と6チームのなかでは最も遅いタイミングの急造チームながら、第2戦目まで終えたポイント獲得ランキングでは4位にランキングしている。
第2戦目までの獲得ポイント
1位:エミレーツ・チーム・ニュージーランド(ニュージーランド)/72ポイント
2位:ランドローバー・BAR(イギリス)/65ポイント
3位:オラクル・チーム・USA(アメリカ)/64ポイント
4位:ソフトバンク・チーム・ジャパン(日本)/56ポイント
5位:アルテミス・レーシング(スウェーデン)/53ポイント
6位:グルパマ・チーム・フランス(フランス)/50ポイント
上位までのポイント差はあまりなく、バミューダで予定されている全4レースの結果次第では下位チームにも逆転の可能性は十分にある点差だ。
また第3戦の会場のバミューダ諸島は、2017年6月に開催されるアメリカズカップ本戦の開催地ともなっており、本戦へ向けて重要な一戦と言える。ちなみに、ワールドシリーズは前述のように2015年が全3戦、2016年のカレンダーは未定だが、シカゴをはじめ2015年よりも多い大会数が予定されている。
アメリカズカップの歴史
現在ワールドシリーズに参加している「オラクル・チーム・USA」(中央)がチャンピオンとしてカップ保持者となっている 【Getty Images】
1851年に開始された大会に参加したのは全部で15艇。そのうち14艇が地元イギリスのチームで、残りの1艇が大西洋を越えて参加したアメリカチームだった。当初の下馬評では、現地の気象や海流などの知識がある地元イギリスチーム同士の優戦争いになると思われたが、予想を覆し、ほかのイギリス艇を引き離したアメリカチームが断トツでトップフィニッシュ。用意されたカップはアメリカチームが獲得し、アメリカ本土まで持って行ってしまった。
これが、第1回大会がイギリスで開催されたものの「アメリカズカップ」と呼ばれている由縁となっている。
カップを持ち帰ったアメリカチームは、ヨットクラブがカップを所持するとともに、世界中のヨットクラブからこのカップを獲得するための挑戦を受けるというルールを策定。これが現在まで続くアメリカズカップの基本となっている。今回日本から挑戦しているソフトバンク・チーム・ジャパンも新西宮にある「関西ヨットクラブ」が母体となっている。
一方、カップを奪われたイギリスとしては、当時世界最高の海洋国としての威厳を見せるために開催したレースで、新興国家のアメリカに面子とプライドを完全にたたきつぶされた結果となった。以降、海洋国の威厳とプライド、そしてカップを取り返すためにアメリカに挑戦し続けるが、ことごとく敗退。ティーバッグの紅茶で有名なサー・トーマス・リプトンもアメリカズカップに魅了されたひとりとして、カップ奪回の敗退者リストに名前を残している。
結局アメリカチームは1983年の第25回大会でオーストラリアに敗れるまで、132年間も勝利し続けカップを保持。1987年の第26回大会でアメリカがカップ奪回するものの、その後ニュージーランド、スイスへとカップは移動。2010年の第33回大会でアメリカが3度目のカップ獲得に成功し、現在ワールドシリーズに参加している「オラクル・チーム・USA」がチャンピオンとしてカップ保持者となっている。