競泳日本がリオで目指すべきチーム像 メダル量産へ、欠かせない萩野の存在

折山淑美

リオ五輪の金メダルには記録も必要

男子200メートルバタフライで優勝したシェー(中央)をはじめ、リオ五輪では海外勢もさらにレベルを上げてくるだろう。左は2位のレクロー、右は3位のスイコウスキー 【写真:ロイター/アフロ】

 そこで必要なのは、世界の進化を明確に見極めること。上野広治総監督はこう言う。

「200メートルバタフライの決勝の前に、瀬戸が1分53秒前半を狙うと言ったけど、私は『それでは厳しいのでは』と思ったんです。今回の優勝争いは結局そのレベルで収まったけど、来年の五輪を考えればマイケル・フェルプス(米国)が出てくるし、そうなれば今回1位と2位のラザロ・シェー(ハンガリー)やチャド・レクロー(南アフリカ)ももっとレベルをあげて挑んでくるはず。そうなった時にその一角を崩すには、相当な覚悟は必要になると思う」

 また平井監督も「今回の優勝記録は、女子自由形のケイティ・レデッキー(米国)以外は『こんなもんだろう』と思ったけど、日本の3個の金メダルに関して言えば、瀬戸は自己ベストだったけど相手にも恵まれて、そんなに高いレベルではなかった。また星と渡部も勝負では勝ったが自己ベストも出していない状態。今回金を取ったからといって、来年も取れるという保証はない状況。だから五輪で戦う来年は、世界新も視野に入れていかないと金を取るのはなかなか難しいと思う」と話す。

 今回も各自でそれぞれも目標を口にしながら、実現できない選手が多かった。戦いが終わった今は、その目標が正しかったのかを自分たちで冷静に検証することも必要だろう。その上で迎える来年こそは、ライバルの状況と、自分たちが取り組んできたことを冷静に見極め、確実に結果を残すという戦いが求められる。

入江はまず自分の競技に集中を

入江は背中でチームを引っ張ることが求められている 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 そんな戦いが求められる来年の日本チームをにらめば、女子は今回金メダルを獲得した渡部と星の2枚看板になるだろう。一方、男子の柱となると、やはり今回欠場した萩野の存在は欠かせないだろう。リオデジャネイロ五輪では競技初日に400メートル個人メドレーが行われる。そこで確実に結果を出してチームを流れに乗せるためには、彼の力が必要だ。今回優勝した瀬戸と2枚看板で戦えば、ライバルにもプレッシャーとなるはずだ。

 複数種目に挑戦する萩野を柱に、同じく複数種目に挑戦する瀬戸が獲得メダル数の争いでもライバルとして競り合えるようになれば、チームが活性化して分厚い戦力になる。さらに2人が800メートルフリーリレー出場の可能性も大きいだけに、チームの気勢をさらに上げることができるはずだ。

 そんな2人を主役にして、今回主将として挑戦しながらも狙った結果を出せずに悔しい思いをした入江には、まずは「自分の役割は背中でチームメイトを引っ張ること」と割り切って、自分の競技に集中してほしい。個人でも確実に金メダルを狙える力を持っていることは自他ともに認めているだけに、トップを狙う取り組みに専念し、安定感を増すことができれば、チームが万が一になった時には悪い流れをガッチリと止めてくれる重石のようになることもできる。若いチームゆえに、そんな存在はチームを引っ張る者以上に必要とされるはずだ。

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著者プロフィール

1953年1月26日長野県生まれ。神奈川大学工学部卒業後、『週刊プレイボーイ』『月刊プレイボーイ』『Number』『Sportiva』ほかで活躍中の「アマチュアスポーツ」専門ライター。著書『誰よりも遠くへ―原田雅彦と男達の熱き闘い―』(集英社)『高橋尚子 金メダルへの絆』(構成/日本文芸社)『船木和喜をK点まで運んだ3つの風』(学習研究社)『眠らないウサギ―井上康生の柔道一直線!』(創美社)『末続慎吾×高野進--栄光への助走 日本人でも世界と戦える! 』(集英社)『泳げ!北島ッ 金メダルまでの軌跡』(太田出版)ほか多数。

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