ローズ、フランコが現役復帰する背景 独立リーグが期待する興行的価値

阿佐智

タフィー・ローズが富山に入団

ルートインBCリーグ富山に入団したタフィ・ローズ(左から2人目)。46歳になったかつてのホームラン王はどんなプレーを見せてくれるだろうか 【写真は共同】

 近鉄、巨人、オリックスで活躍したタフィ・ローズのルートインBCリーグ・富山GRNサンダーバーズ入団が発表され、3日に入団会見が行われた。MLBでは開幕戦3打席連続本塁打の記録を作り(カブス時代)、NPBでは外国人選手最多の通算464本塁打を放ったレジェンドだが、すでに46歳。話題にはなるものの、すでにオリックスを退団して6年になる「元選手」が果たして、プロに値するプレーをファンに見せられるか、注目が集まっている。

 今シーズン、BCリーグでプレーする元メジャーリーガーは実に8人にのぼる。彼らの何人かは、MLBやNPBといったトップリーグへの復帰を模索しながら、独立リーグでの現役続行を選択しているが、ローズがNPB復帰を本気で考えているとも思えない。“レジェンド”度で、ローズを上回る、MLB通算2586安打のフリオ・フランコも、石川ミリオンスターズで選手兼任監督として日本球界に復帰したが、本人に話を聞いた限りでは、その目的は「現役復帰とその継続」(フランコ)であって、トップリーグへの復帰ではないようだ。

 一度引退した選手の現役復帰は、実は珍しいことではない。そもそもローズ自身も、巨人を退団後、2006年のメジャーキャンプでマイナー契約を提示された時点でいったん引退し、1年のブランクをおいてNPBのオリックスに復帰している。

 彼のオリックス時代の同僚、アレックス・カブレラも、12年の福岡ソフトバンク退団後にプレーした故郷ベネズエラのウインターリーグで、敵チームの捕手を務めていた息子の前でホームランを放つと、ベースを1周した後にユニホームを息子に手渡して引退を宣言。そんな劇的なパフォーマンスをしながらも、翌13年のウインターリーグで現役復帰。42歳にして同リーグのシーズン本塁打の新記録を打ち立てた。

「生きた教材」面が強い岩村、大家の例

 これらは、メジャーとまではいかないが、各国のトップリーグへの復帰例である。しかし、本来的に若い選手がさらに上を目指す独立リーグに、長いブランクのある大物が入団するという今回の事例とは、根本的に別物と考えるべきだろう。

 20年前の草創期の米独立リーグでも、「元メジャー」はプレーしていた。しかし、彼らの年齢はまだ若く、十分に戦力になっていたし、それ以上に、コーチ兼任の彼らのプレーは、未熟な選手たちにとって生きた教材になっていた。

 米国ではないが、1999年に台湾に渡り、兼任コーチとして最多勝に輝いた、かつての西武のエース、渡辺久信(現、埼玉西武シニアディレクター)の例などもこの部類に入るだろう。BCリーグでも、福島の兼任監督・岩村明憲や、富山の大家友和、そして石川の多田野数人らが、今なおプレーするのは、生きた教材という面が強い。それでも、彼らとて、トップリーグへの復帰を諦めたわけではないだろう。実際、新球団の武蔵ヒートベアーズに入団した、ベック・チャスン(元マリナーズ、パドレス)、ファウティノ・デロスサントス(元アスレチックス)という2人の元メジャーリーガーは、MLB復帰を究極の目標に、「まずはNPBに入るため、BCリーグを選んだ」と口をそろえる。

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著者プロフィール

世界180カ国を巡ったライター。野球も世界15カ国で取材。その豊富な経験を生かして『ベースボールマガジン』、『週刊ベースボール』(以上ベースボールマガジン社)、『読む野球』(主婦の友社)などに寄稿している。

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