ローズ、フランコが現役復帰する背景 独立リーグが期待する興行的価値

阿佐智

米国では元メジャーの復帰は興業目的

今季、BCリーグ石川の選手兼監督で復帰したフランコ。球団は興行面での“フランコ効果”を期待している 【写真は共同】

 しかし、今回のローズやフランコの事例は、それらとも少し違うような気がする。なぜならば、彼らがプレーから遠ざかっていた年数を考えると、いくら過去に高いレベルのパフォーマンスを見せていたとしても、もはやその過去の栄光とは、かなり離れたレベルのプレーしか見せることはできないと考えるのが妥当だからである。確かに、プレーから数年離れていたとしても、彼らなら、それなりの結果を残すだろう。実際、フランコは打率3割1分8厘(6月3日現在)という成績を残している。しかし、そのプレーが全盛時のそれに遠く及ばないことは、自分だけでなく、周囲も承知していることだろう。

 このような、しばらくプレーから遠ざかったビッグネームの独立リーグでの現役復帰は、本場・米国ではよくある話である。アスレチックスの主砲だったホセ・カンセコはその好例で、02年の3Aでのプレー後、いったん引退したが、その4年後の06年、集客に困っていた新興のゴールデン・リーグで1シーズンだけプレーした。そして、46歳になった10年に、これまた新興のユナイテッド・リーグで2度目の現役復帰を果たし、13年までプレーしている。

 ここから見えてくるのは、客寄せとしての、元メジャーリーガーの招致である。極端な例になると、82年に引退したMLB通算119勝のビル・リーだろう。彼が再びマウンドに登ったのは、28年後の2010年だった。その後、隔年ごとに現役復帰し、さまざまな「プロ最高齢の世界記録」を更新していくのだが、最終出場となった12年シーズンのパシフィック・アソシエーションでは、マウンドばかりではなく、打席にも立ち、最高齢安打の世界記録を66歳で更新している。引退後の独立リーグでの試合出場がいずれも1〜2試合だけであることは、彼の現役復帰が、完全に興業目的であったことを示している。

興行的色合いも若手にはいい刺激に

1年のブランクを経て復帰したオリックス時代のように、ホームラン連発の期待がかかるローズ 【写真は共同】

 今回のローズのBCリーグ入りもたぶんに興業的な色合いが濃いだろう。実際、フランコの入団について、石川の端保聡球団社長は「話題作り」の側面を隠そうとしない。「北陸新幹線も開通したし、ロッテファンが来るんじゃないの?」(端保球団社長)と“フランコ効果”を期待している。

 このリーグは、すでに数年前から南米コロンビアリーグとの選手のやりとりを通じた提携関係を構築したり、ヨーロッパから選手を受け入れたりと、国際的なネットワークを広げている。その中で13年には米独立リーグとの交流戦も実現している。本場の独立リーグのビッグネーム招致という“裏技”も自然と情報として伝わってきたことだろう。

 しかし、私は、第一線を退いた往年の名プレーヤーの現役復帰を決して否定的にとらえてはいない。プロ野球とは本質的に見せ物興業である。力が落ちたにもかかわらず、現状の実力に合わないトップリーグでプレーさせるようなことにはむろん反対だが、マイナーレベルに、高い技術を持った彼らが参入してくることは、若い選手の刺激になるに違いない。何よりも、彼らは真剣に野球に取り組んでいる。試合後、移動までの短い時間に、ランニングで汗を流すフランコの姿は、プロフェッショナルそのものだった。

 私はひそかに期待している。ローズが再びあの弾丸ライナーのホームランをスタンドに連発することを。かつて1年のブランクのあと、オリックスに復帰したときも、居並ぶ解説者たちの「野球をなめている」の声を、彼は打率2割9分1厘、42本塁打という見事な成績で封印した。ちなみに、カンセコが46歳で最後に現役復帰したシーズンの成績は、11試合で打率3割8分5厘、4本塁打。われわれが知っているローズなら、この数字は軽く超えてくれるに違いない。

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著者プロフィール

世界180カ国を巡ったライター。野球も世界15カ国で取材。その豊富な経験を生かして『ベースボールマガジン』、『週刊ベースボール』(以上ベースボールマガジン社)、『読む野球』(主婦の友社)などに寄稿している。

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