宮市亮が語るトゥエンテ挑戦で得たもの 不本意なシーズンにつかんだ新たな武器
自分のコンディションを錯覚していた
トゥエンテで即戦力として期待されながら、不本意なシーズンを過ごした宮市。この1年を本人が振り返った 【Getty Images】
「開幕前はアーセナルで本当に動きがよかったんです。『このまま行けば、うまくいくんじゃないか』と感じていた。だけど、それは錯覚でした。ずっと試合に出ていなかったので、実は体が休んでいた。それに気付かず、アーセナルでの練習は良いコンディションだと思っていた。フィットネスが戻ってきて、『コンディションが良いとは、こういうことなんだな』というのがようやく分かった。それが今です」
宮市にとっては今季の最終戦となったオランダ2部リーグ第37節アイントホーフェン戦で、彼は自陣ペナルティーエリアから約90メートルの単独ドリブルで一気にロングカウンターを仕掛け、フィニッシュまで持ち込むビッグプレーを見せた。
「そこが自分の持ち味なんで。でも、(トップチームでは)その持ち味をなかなか出せなかった。今まで出せていたものが、ぜんぜん自分の足じゃないみたいな。『おかしいなあ』という感じだけれど、結果も出さないといけない。すごく難しかったですね」
「サッカーを辞めたいと思った」
「そうなんです。抜いても追いつかれていたんです。引っかかるし。『あれ!?』って。そこからでしたね」
やがてメンタルが崩れていった。
「自分に期待していた部分があったから、『なんだ、この体は? ぜんぜん動かないじゃないか』みたいな……。結果が出ず、思うようにいかない。そのターニングポイントは、以前にもお話ししましたがヘーレンフェーン戦(11月1日、1部リーグの第11節)だった。あの試合で精神的に追い込まれました。でも、そういうところで自分と向かい合えたのはよかったです」
あまりのふがいなさに、宮市は「サッカーを辞めたいと思った」という。
「練習に行くのが嫌でした。でも仕事なんで行かないとダメです(苦笑)。仕事という感覚がありすぎた」
ヘーレンフェーン戦後、2試合続けて宮市はベンチ入りはしたものの、トップチームでの出場機会はなく、ますますコンディションを上げることが難しくなった。アルフレッド・スフローダー監督の勧めもあって、11月28日のNEC戦からリザーブチームで試合、トップチームで練習という日々を過ごすことになった。
コーチとの練習で得た新たな武器
左サイドからカットインしてシュート。宮市は2部で同じような形からゴールを挙げている 【Getty Images】
「PSVリザーブチーム戦は、徐々に戻りつつあると思ったんですけれど、まだつかめていなかったです。今シーズンの2点目を取ったデ・フラーフハップ戦で、『調子良いな。走れるな』と思いました。本来の動き、思っている動きができました」
4月24日のローダ戦のゴールも含め、宮市のゴールは左サイドからカットインし、ファーサイドへカーブをかけるように決めたものばかりだった。4月20日のアヤックス・リザーブチーム戦でも宮市は同じようなシュートを放ち、それが味方のゴールにつながっている。トゥエンテにはユリ・ムルダーというストライカーコーチがいるが、何か教えがあったのだろうか?
「いや、ユリより、バウデワイン(・パールプラッツ)というウインガーだったコーチと練習しました。よく練習に付き合ってくれて、いろいろ教えてもらいました」
――オランダ2部リーグで3ゴール決めたが、そのパターンがいつも一緒だった。左サイドからカットインして、ファーサイドへカーブをかけていたが?
それは練習からやっていました。毎日、1本でもいいから練習後にやろうということで、やっていました。
――それが試合で成果として出たわけだ。
はい。だから試合後はバウデワインも喜んでくれました。
――これは一生の武器になる?
これまでは縦、縦のイメージがあったので、そこでシュートを撃つことができれば、いろんな選択肢が増えますし、よかったです。
――これらのゴールは動画サイトに乗っている。夏の移籍市場に期待が持てるかも?
そうですね(笑)。それを見て、どこか誘ってくれればいいですけれど。でも、どこであろうと頑張っていれば、どこかで誰かが見ていてくれるという気持ちで2部リーグでもずっとやっていましたので、何かしら結果を出せてよかったです。