復活を期すトゥエンテ宮市が途中出場 “リオジーニョ”の再び輝く姿を期待して

中田徹

デビュー戦は69分から途中出場

ゴー・アヘッド・イーグルス戦に途中出場した宮市。トゥエンテでのデビューを果たした 【VI-Images via Getty Images】

 宮市亮がオランダリーグに戻って来た。イングランドのアーセナルから1年間の期限付き移籍でトゥエンテに加わった宮市は、13日のエールディビジ第5節ゴー・アヘッド・イーグルス戦で69分から出場した。チームは2−1で勝ち、5節目にして今季初勝利を記録。トゥエンテの戦績は1勝4分けで8位に順位を上げている。

 宮市のファーストタッチは71分だった。MFカモヘロ・モコチョが左サイドの宮市にパスを出すと、観客席から「おおー」という歓声がとどろいた。しかし、当の宮市はあっさりとワンタッチでDFにバックパスを出し、スタジアムは肩すかしを食らった格好に。しかし、この歓声はしっかり宮市にも「期待の表れというのを感じる」と届いていた。

 出場直後は左サイドに張ってプレーし、トップ下のハキム・ジエクとの感覚を確かめるように足下でボールをもらったり、相手DFの裏へ飛び出してスルーパスを受けたりした。しばらくするとポジションを右サイドへ移し、センターFWルク・カスタイニョスやMFカイル・エベシリオとのタイミングを探りながらプレーした。試合終盤になると、2−1のリードを守りきるべく、対面の左サイドバックの攻め上がりをケアして、自陣深くまで戻って守備に奔走した。

「(チーム練習に加わったのは)おとといなので、実質、2日ぐらいしかやっていません。シーズンは長いので、これから連携を深めていきたいと思います。『外に常に張って1対1をやってくれ』と言われていたので、それを意識してやっていましたが、なかなか自分のところにボールが来なかったですし、ボールにも絡んでいけなかった。どんどん出場時間を増やしていって、自分の良さを出していければいいと思います」(宮市)

難しい時期だったイングランドでの日々

かつてフェイエノールトでプレーしていた宮市。“リオジーニョ”のニックネームで親しまれた 【写真:アフロ】

 宮市が前回、オランダリーグでプレーしたのは、2011年2月から半シーズン、まだ18歳の時だった。当時フェイエノールトに所属していた宮市が、マリオ・ベーン監督から戦術ボードで授かった指示は「↑(縦に行け)」。その勢いを無垢(むく)な宮市はピッチの上でぶつけた。

 デビュー戦となったフィテッセ戦で、60メートルのドリブル突破を見せオランダサッカーファンの度肝を抜くと、デ・カイプ(ホームのフェイエノールト・スタディオンの愛称)でのデビューマッチとなったヘラクレス戦では左足のシュートを決めてマン・オブ・ザ・マッチに。この日から“リオジーニョ”のニックネームが定着した。10年10月にはPSVに0−10と大敗するなど、深刻な低迷期にあったフェイエノールトにポジティブな風を吹かせた宮市は、大きなインパクトをオランダに残してアーセナルへ戻っていた。

 しかし、プレミアリーグでは期限付き移籍先のボルトン、ウィガン、それからアーセナルへ再び戻っても結果を残せなかった。加入記者会見で宮市は、イングランドでの日々をこう振り返っている。

「難しい時期でした。この2年間、けがをしていましたからね。でもその間に人間的には成長できました。フェイエノールトにいた4年前より強くなっています。今は自信もあります」

宮市「自分の良さをどんどん出していければ」

 ブラジルワールドカップでは、ロン・フラール(アストン・ビラ)、ステファン・デ・フライ(ラツィオ)、ブルーノ・マルティンス・インディ(ポルト)、レロイ・フェル(QPR)、ジョルジニオ・ワイナルドゥム(PSV)といった、宮市のフェイエノールト時代の仲間が活躍し、オランダ代表の3位に貢献した。

「あの時の選手がオランダのスタメンで出たりしていた。そのようなステップアップを見ていると、自分もそういう風に乗っかっていきたい。まずはここで結果を残していかないと次へいけないので、結果にこだわりたい。本当に結果にこだわる年だと思うので、そこは大事にしていきたいと思います」

 トゥエンテではまだチームメートとの連携を探りながらプレーする宮市は、自身の試合勘を早く取り戻すのも必要だ。一方、オランダの人々が宮市に夢見るのは、“リオジーニョ”としてフェイエノールトの聖地デ・カイプで輝いた日々の姿だ。

「(チームの4−3−3は)本当に個の光るフォーメーション。そう言う意味では目立ちやすいフォーメーションですし、自分の良さをどんどん出していければ良いと思います」

 オランダ人受けする、宮市のサイドアタック。その復活に期待したい。 
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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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