宮市「後半戦でインパクトを残したい」 リザーブチームで秘める決意

中田徹

宮市に組まれた個人プログラム

試合勘を取り戻すべく、リザーブチームの試合に出場した宮市 【VI-Images via Getty Images】

 フェイエノールト時代の活躍から、大きな期待を集めて今季トゥエンテの一員になった宮市亮だが、ここ2シーズン、けがで実戦から遠ざかったことが影響してか今季は結果を残せていない。アルフレッド・スフローダー監督は本当に根気よく宮市にチャンスを与え続けたが、11月9日のエールディビジ第12節ドルトレヒト戦(4−0)、23日の第13節ズウォレ戦(2−1)と2試合続けて出場機会を与えなかった。

 ここ2シーズン、宮市はけがが多く、ウィガンとアーセナルでほとんど試合に出ておらず、今は試合勘を取り戻すのに必死だ。トップチームに居てもベンチに座り続けていたら、宮市の状況が良くなるはずもない。そこでトゥエンテは宮市をリザーブチームに送り、集中して出場時間を稼ぐことにした。第14節のフローニンゲン戦を2日後に控えた28日、スフローダー監督は記者会見で説明した。

「宮市にとって大事なのはプレーし続けること。リザーブチームなら短期間に2試合、フル出場することができる」

 オランダ2部リーグに所属するトゥエンテのリザーブチームは、28日に対NEC 、12月1日に対デン・ボスと中2日で試合が組まれていた。ここで宮市を180分間プレーさせ、7日の第14節フィテッセ戦での復帰を目標とする個人プログラムをトゥエンテは組んでくれたのだった。

 ところが、宮市はNEC戦の前半終了間際に、相手選手と衝突して脳振とうを起こし、プログラムは45分間で終わってしまった。こうして宮市は6日もオランダ2部リーグの対デ・フラーフスハップ戦を戦うことになった。

照準は12月17日のカップ戦

 試合は3−3となるまで常にトゥエンテが先行したが、結局3−6で敗れてしまった。左ウイングとして出場した宮市は予定通り90分間プレーした。これが彼にとって今季初のフル出場だった。

「高校サッカーみたいな試合でしたね。大人のサッカーで6点取られることはなかなかない」と苦笑する宮市だが、試合に出続けることの尊さを思い知っただけあって、「僕が来ることによって出られなくなる選手もいる。その中でも試合に出られる喜びをかみしめてます。ベンチに座っているより、90分間試合に出た方が僕はうれしい。それはありがたいと思います」と語った。

 この試合でのパフォーマンスを宮市は「オランダに戻って来てから初めての90分。前半は自分の形を出せたと思うけど、後半はボールを触ってないというか、マラソン大会みたいだった」と振り返ったが、観客席から見ていると前半の出来もそれほど良いとは思えなかった。彼に求められるのは爆発力だが、それを前半発揮したのは自陣からのカウンターでドリブルし、相手DFに引っ掛けられてFKを得たシーンと、サイドから仕掛けてクロスを入れたシーンの2回だけだった。

 ともあれ、宮市の復活プログラムは進行している。

「フィテッセ戦(7日)、PSV(14日の第16節)の試合に向けてということで監督と話していたんですけど、僕が脳振とうになっちゃって、プレー時間を積めていない。また来週(リザーブチームのスパルタ戦で)出るのかなという感じです。カップ戦(17日のデ・フラーフスハップ戦)があるんで、そこに照準を合わせてくる感じだと思います」

移籍報道を宮市はどう受け止めたか

 さて、日本とオランダで、宮市の去就が話題になっている。11月29日、日本メディアが宮市の浦和移籍の噂を報じ、それがオランダの各メディアで「宮市、ウインターブレークに日本へ帰る」と拡散されたのである。さらにエルフ誌のウェブ版は「宮市は『僕は長くトゥエンテに留まりたい』と語った」と掲載したことから、日本ではあたかも宮市が移籍話を否定したかのように受け止められている。実は、この宮市のコメントは、エルフ12月号からの抜粋で、今回の移籍話とは全く関係ないもの。「あのインタビューを受けたのは3カ月ぐらい前」と宮市。つまり、トゥエンテでの意気込みを述べたものだった。

「(インタビューの)古い話を持ってこられた。日本に戻ると言う話も僕はYahoo!で知った。だから、そんなもんなのかと思う。僕は気にしないし、今いる立場で頑張ることが大事。それこそフェイエノールトにいた時なんて半分のシーズンしかやっていないですけど、そこでポーンと行けるわけだし、やっぱり最後のインパクトが大事だと思う。だからこそ、そこに照準を合わせたい。もう前半戦は過ぎてしまったので、後半戦に頑張りたい。そこから乗っていけば、スカウトとかいろんなチームからも見てもらえると思うし、トゥエンテの印象も良くなると思う。終わり良ければすべて良しじゃないですけど、頑張りたい」
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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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