「魅力」問われる「勝負の年」のJリーグ 起爆剤として期待したい新戦力たち

川端暁彦

新たな一歩を踏み出すシーズン

いよいよ幕が開ける23年目のJリーグ。新たな一歩を踏み出す今季は「勝負の年」となる 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】

 2015年3月7日、明治安田生命J1リーグがその幕を開ける。1993年の開幕から数えて22年。「百年構想」を掲げた当時を思えば、現在は「七十八年構想」といったところ。その歳月をどう見るかは人それぞれだが、少なくとも歴史を刻んできたのは間違いない。

 その中でJリーグがある種の停滞感を抱えてしまったこともまた、否めない。今季からリーグの形式を「2ステージ制+チャンピオンシップ」という形に改め、「分かりやすさ」を強調するようになったのも、現状への危機感の裏返し。地上波テレビへの露出を増やしていくことを掲げて新たな一歩を踏み出すシーズンとなるが、逆に言えば、今季は「勝負の年」となる。

 そして、この勝負を決めるのは、決して「露出」ではないだろう。露出を増やすことは手段でしかない。露出を増やして「本来Jリーグが持っている魅力を見てもらう」(Jリーグ・中西大介常務理事)ことこそが目的で、その結果として何が待っているかがポイントだ。「見てはみたけれど、魅力なんてないじゃん」と言われないような試合を見せられるか。エンターテインメントを示せるかが肝なのだ。

 その意味で言えば、主役はやはりプレーヤーだ。彼ら自身の「魅力」が問われることになる。まず起爆剤として期待したいのは、今季から新たにJリーグへやって来た選手たちということになるだろう。

サプライズだったアデミウソンの獲得

横浜FMに加入するアデミウソン。U−21ブラジル代表の「10番」という実績を持つ 【写真:Maurizio Borsari/アフロ】

 近頃は「大型……?……補強」といった感じの選手獲得が目に付いてしまうJリーグだが、今季はこれまで地味な補強が目立っていた1チームが派手な補強を敢行している。横浜F・マリノスは14年U−21ブラジル代表の「10番」だったFWアデミウソンを、名門サンパウロ(ブラジル)から獲得。国際大会でも活躍した経歴を持ち、移籍市場における価格は10億円とも言われ、また若さもある選手の獲得はサプライズだった。

 背景にはマンチェスター・シティ(イングランド)を統括するシティグループが横浜FMを買収しようとしている動きがあるようだが、リーグの活性化と魅力作りにやはり「投資」は欠かせない(ただし、遺憾ながらアデミウソンは開幕戦には間に合わないのだが……)。

 Jリーグが発足当初に想定していなかった悩みとしては、選手の欧州流出という問題もある。毎年、次から次へと若きスター候補が、「候補」の二文字が取れる前に、あるいは取れた途端に欧州へ渡って行ってしまうようでは、なかなか「魅力」を打ち出しづらい。中村俊輔(横浜FM)や遠藤保仁(ガンバ大阪)、あるいは三浦知良(横浜FC)や川口能活(FC岐阜)など、「名前で客を呼べる」選手がベテランに偏ってしまっているのも、人気が出た若手選手が早々に海を渡ってしまうゆえである。

 今季開幕前にもまた、U−22日本代表にも名を連ねるFW南野拓実(セレッソ大阪→ザルツブルク/オーストリア)が旅立った。個人として栄達を求めるのは自然なことで、より大きなサラリーをつかみ取る可能性があり、よりハイレベルな環境へ挑戦できる道を選ぶのはプレーヤーとしても当然の選択。ただ、純粋にJリーグの興行という視点で見れば、こうした動きは悩ましいものではある。若手選手がこぞって欧州を目指し、日本代表に海外組の選手がズラリと名を連ねる現状は、「Jリーグはレベルが低い、魅力がない」というパブリックイメージを強調する効果も生んでしまっているからだ。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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