「魅力」問われる「勝負の年」のJリーグ 起爆剤として期待したい新戦力たち

川端暁彦

人気の高い柏の大津

「JリーグへのUターン」を選んだ柏の大津。高い人気で起爆剤となる可能性は十分だ 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

 その意味で、「帰って来た男」に注目しておきたい。

 言うまでもなく、欧州に挑戦する若者が大量に出るということは、そこで成功をつかめない選手も出てくるということだ。成功をつかむまで必死に欧州で頑張るというのも一つの選択だが、「JリーグへのUターン」を選ぶというのもプロフェッショナルとしての選択だろう。最近では、ドイツへの挑戦で夢破れた宇佐美貴史(G大阪)が帰参を果たし、「三冠」の原動力となったのは記憶に新しいところだ。

 今季もその候補はいる。柏レイソルの大津祐樹だ。

 11年7月に柏からボルシアMG(ドイツ)へと移籍した大津は、そこで出場機会に恵まれぬまま、翌年にVVVフェンロ(オランダ)へ移籍。VVVでは活躍も見せたが、オランダの中小クラブをステップに雄飛することはかなわず、柏復帰という道を選んだ。

 類い希な技巧に加えて、「本当に常に前向きなメンタリティーはすごい」と吉田達磨新監督も舌を巻く「心」の強さがピッチにもたらす影響力も特筆もの。途中交代でも、彼がピッチに立つと空気が変わるのが分かるほどだ。開幕前の練習試合を見に行ったときは、その人気の高さもあらためて実感させられただけに、クラブの起爆剤となる可能性は十分にある。4位になった12年のロンドン五輪で主役の一人となったタレントの“化けかた”は、新指揮官の下でまったく新しいサッカーを志向するチームにとっても、重要な意味を持つ。

新天地での活躍が期待される移籍組

湘南に移籍した山田(左)は開幕戦でいきなり古巣の浦和と対戦する 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】

 もう一つ、移籍組の動向も「魅力」向上のキーファクターだ。

 チームにフィットせずにまるで活躍していなかった選手が、別のチーム、別の監督の下では見違えるような輝きを見せることがある。これは11人が連動してやるスポーツならではの醍醐味(だいごみ)だろう。選手同士にせよ、選手と監督の関係にせよ、「合う・合わない」があるのは仕方ない。

 その意味で注目しているのは浦和レッズから湘南ベルマーレへ籍を移したMF山田直輝だ。高卒1年目で日本代表にも選ばれていた逸材は、負傷の影響もあって近年は低空飛行を続けてきた。ミハイロ・ペトロヴィッチ監督のサッカースタイルにフィットしなかった一面もあり、今季J1へと昇格した湘南へ期限付きで移籍してきた。タフな運動量と球際のバトルを要求し、縦へ速いサッカーを志向する湘南と山田の個性がうまく噛み合えば、「復活のシーズン」となる可能性は十分にありそうだ。

 ベテラン勢では、元日本代表FW前田遼一が、高卒で加入して以来ずっとプレーしてきたジュビロ磐田を離れ、FC東京へ加入することとなった。なかなか爆発的躍進に至らない首都クラブに「点火」する存在となり得るビッグな補強だろう。今年34歳になる選手だが、とにかくよく食べる選手なだけに(?)、まだまだ運動量に衰えは見られない。クロスボールからでも動き出しからでも点を取れるストライカーの存在は、イタリアスタイルを標ぼうするチームに合うはず。昨季大ブレイクした日本代表FW武藤嘉紀との新コンビは、今季のJリーグを熱くしてくれると期待したい。

「魅力」が問われる「勝負の年」のJリーグ。J1は7日に「G大阪vs.FC東京」「横浜FMvs.川崎フロンターレ」「湘南×浦和」など9つの対戦からスタートを切る(清水エスパルスvs.鹿島アントラーズは8日)。地上波TVやBSでの放送も予定されているので、この機に23年目を迎えたリーグの「魅力」の有無を確認してみていただければと思っている。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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