7戦不発、本田圭佑の突破口はどこに? カギは「引いた相手を崩す攻撃の向上」

清水英斗

ボールをもらう前の駆け引き

7戦連続無得点。本田の突破口はどこにあるのか 【Getty Images】

 2010年は本田圭佑、遠藤保仁、岡崎慎司。14年は本田、岡崎。ワールドカップの舞台で2大会連続のゴールを挙げた2人の日本代表選手は、それぞれ今季のセリエAとブンデスリーガで得点ランク上位につける活躍を見せている。得点能力という観点では、ずば抜けているのは間違いない。

 ゲームをつくる選手から、ゲームを決める選手へ。本田が司令塔からフィニッシャーへとプレースタイルを変えているのは、日本代表の利益になるはず。特に今季の右ウイングでは、ボールをもらう前の駆け引きが際立つ。

 昨季のミランでは、同じ右サイドで、縦パスをそのまま足下に収めようとするプレーが多かった。右半身で相手DFをブロックし、ボールを隠しながら、左足で縦パスを収める。ザックジャパンのトップ下で行っていたようなポストプレーを、右サイドで実行し、パスワークの中継点になろうとした。しかし、その結果、セリエAのDFたちはゴールを向いていない本田に対して、恐れることなく執拗な当たりを浴びせ、本田のプレーはかなり制限された。

明らかに変化したトラップ

 ところが、今季は違う。本田は自分をマークしているDFに対して、ボールを受ける前に、自分から駆け引きを仕掛ける。分かりやすいシーンは、11月23日のミラノダービーに見られた。パスを受ける本田は、転がってくるボールに自分から寄って行き、左足で収めるようなフリをするが、触らず、そのまま右足までボールを流してトラップ。

 わずか左足と右足の差異。たった1歩分のスルーフェイントだが、対峙(たいじ)したインテルDFドドを混乱させるには十分だった。本田の左足に合わせて中央寄りにポジションをとったドドは、縦のスペースを空けており、本田はそこへファーストタッチからドリブルで運び、侵入に成功した。

 止めると見せかけ、流す。下がると見せかけ、反転して飛び出す。それまではボールを収めることを重視した本田のトラップが、明らかにアタッカーの攻撃的トラップに変化している。最優先すべきは、スペースへの仕掛け。最初に裏を突かれる恐怖を与えれば、相手も思い切って間合いを詰められない。初めから左足に止めると分かっていたかのような昨季のプレーに比べると、今季の本田のオフ・ザ・ボールの細かい駆け引きは、非常に見ごたえがある。

 とはいえ、ディフェンス戦術にうるさいセリエAのチームは、対人においても、相手のくせを研究して対応するのがうまい。0−1で敗れた第14節のジェノア戦は、上記のような本田のフェイントに対し、DFルカ・アントネッリが予測して寄せる場面があった。また、スペースへの飛び出しも強く警戒されている。序盤に通じていたプレーが、通じなくなる場面が増えた。

 セリエAは一筋縄ではいかない。これで7試合連続ノーゴールの本田だが、突破口はどこにあるのだろうか?

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著者プロフィール

1979年12月1日生まれ、岐阜県下呂市出身。プレーヤー目線で試合の深みを切り取るサッカーライター。著書は「欧州サッカー 名将の戦術事典」「サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術」「サッカー観戦力 プロでも見落とすワンランク上の視点」など。現在も週に1回はボールを蹴っており、海外取材では現地の人たちとサッカーを通じて触れ合うのが楽しみとなっている。

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