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海辺のエイシンチャンプを訪ねて
九十九里浜で愛される元2歳王者

のどかな乗馬センターに彼はいた

02年2歳王者エイシンチャンプ、現在は九十九里浜が目と鼻の先にある千葉県一宮乗馬センターで過ごしている(右はスタッフの村岡達夫さん)
02年2歳王者エイシンチャンプ、現在は九十九里浜が目と鼻の先にある千葉県一宮乗馬センターで過ごしている(右はスタッフの村岡達夫さん)【スポーツナビ】

「エイシンチャンプなら、そこにつないでいますよ」

 そう言ってスタッフさんが手で示したつなぎ場は、まさに僕のすぐ横。不覚にも、エイシンチャンプがすぐ隣にいながら全く気が付かなかった。そのことにちょっと恥ずかしくなりながらも、やぁ久しぶり、と一歩近づいて、手を鼻先に伸ばそうとしたら、耳を絞って威嚇されてしまった。まぁ、久しぶりなんて思うのはこっちの勝手な思い込みで、エイシンチャンプは「誰だ、オマエ?」としか思っていないだろうから、これも仕方ない。


 ここは千葉県・一宮町にある「一宮乗馬センター」。九十九里浜が目と鼻の先にあり、耳をすませば波の音が聞こえてきそうなくらい、のどかな場所にある。この乗馬センターにはおよそ30頭が繋養されており、馬に乗って海辺をお散歩できる「海岸コース」が特に人気。インストラクターが馬を引いてくれるので、初心者でも安心して九十九里の雄大な海と浜辺の景色を楽しみながら、海岸乗馬体験を堪能できるのだ。


 この「海岸コース」の乗馬体験をスポーツナビDoで取材することになったのだが、なんと取材先の乗馬センターにエイシンチャンプがいるという。彼は僕の競馬人生の中でもすごく思い入れのある1頭だ。ぜひ会いたい――そう思い、ちゃっかり乗馬取材に同行することにした。


 そして冒頭の“再会”となったわけだ。

“叩き上げ”の2歳チャンピオン

02年朝日杯FS、サクラプレジデント(左)の猛追をクビ差しのぎ2歳王者に輝いた
02年朝日杯FS、サクラプレジデント(左)の猛追をクビ差しのぎ2歳王者に輝いた【写真は共同】

「縁があって大井競馬から直接、ウチに来たんです。引退してすぐでしたから、もう6、7年になりますかね」

 話をしてくれたのは一宮乗馬センターの村岡達夫さん。改めて調べてみると、エイシンチャンプの最後のレースは2007年6月4日、大井で開催された隅田川オープン競走(1600mダート)、1番人気で4着だった。


「ウチに来ると聞いたときは驚きましたね。僕自身、いち競馬ファンとしてエイシンチャンプのレースを見ていましたから、競走馬時代から知っている馬でしたし、弥生賞も中山競馬場で見ていました。それに、GI馬に携われるなんてもちろん初めてのことでしたからね」


 エイシンチャンプは2000年3月23日生まれの14歳。あのオグリキャップも在籍していた栗東の名門・瀬戸口勉厩舎から02年にデビューした。3戦目で初勝利を飾ると、その後は惜しいレースが続いたものの、通算8戦目の京都2歳ステークスで後の菊花賞馬ザッツザプレンティを下して2勝目。これで勢いに乗ったエイシンチャンプは、続くGI朝日杯フューチュリティステークスでも1番人気サクラプレジデントの猛追をクビ差しのぎ、2歳王者に輝いた。エリート然としたSS産駒サクラプレジデントが3戦目だったのに対し、こちらはすでに9戦目。ド根性のレース振りもプラスして、いかにも“叩き上げ”という言葉が似合う馬だった。それは、同じ瀬戸口厩舎にやはりSS産駒で後の二冠馬、ネオユニヴァースがいた影響もあったかもしれない。

思い出深い03年クラシックシーズン

 当時、スポーツ紙の駆け出し記者だった僕は、春のクラシックシーズンになると毎週、そして出走週ともなれば毎日のように瀬戸口厩舎に足を向けていた。もちろん、エイシンチャンプとネオユニヴァースを取材するためだ。瀬戸口厩舎というのはお隣の北橋修二厩舎とともに風通しのいい厩舎で、調教師、助手、厩務員ともにとてもオープン。そんな厩舎に2頭もクラシック最有力候補がいたものだから、仕事としてはとてもはかどっていた。そんなこともあり、エイシンチャンプとネオユニヴァース、この2頭は03年クラシックシーズンでも特に思い出の深い馬たちだった。


 いや、クラシックシーズン中はネオユニヴァースの方に入れ込んでいたため、エイシンチャンプに対し、より深い思い入れができたのは秋以降だったと思う。あれはマイルチャンピオンシップのことだ。

「どの馬の馬券を買えばいいと思いますか? ファインモーションとデュランダルを買おうと思っているんですけど……」と会社のバイトの女の子。

「いや、それよりもエイシンチャンプを買った方がいい。間違いなく突き抜けるから」

 結果は7着。勝ったのはデュランダルで、2着がファインモーションだった。以後、その女の子から馬券のことを聞かれることはなくなった。寂しい思い出である。


 明けて04年1月5日。京都金杯の本社担当として予想を任された僕は、ここでリベンジとばかりに敢然とエイシンチャンプに◎を打った。結果はクビ、ハナ、ハナ差の4着。後でパトロールビデオを見たら、2枠3番発進にも関わらず終始、外、外を回らされる距離ロスがあった。当時はルメールも僕も若かった。

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