海辺のエイシンチャンプを訪ねて――九十九里浜で愛される元2歳王者
乗っていて楽しい馬、気持ちのいい馬
「乗っていて楽しい馬」と村岡さん、乗馬ファンからの人気も高い 【スポーツナビ】
「ああ、やっぱり少し耳を絞ってきましたか(笑)。ここに来た当初はやっぱりGIを勝つくらいの馬なので、繊細と言いますか、カリカリしていましたね。僕も落とされたことがあるんですよ」
村岡さんがそう言ってニッコリ笑った。乗馬の調教は1年にも及んだという。
「今では随分おとなしくなりましたね。頭がいい馬なので、自分がどうすればいいか分かっているんです。乗馬経験が比較的ある人、中級者以上向けにはなりますが、乗馬としてとてもいい馬ですよ。ウチの1番人気の1頭です」
それは知名度のあるGI馬だから、というわけではなく、純粋に乗馬として人気が高いそうだ。エイシンチャンプを指名する人は、競馬を全く知らない人がほとんどだとも教えてくれた。
「背中の感じというか、僕も今まで乗ったことのない感覚でした。やっぱり、さすがGI馬ですよ。その上、乗り手には従順なので乗っていて楽しい馬、気持ちのいい馬。だからみなさん、エイシンチャンプに乗りたいと言ってくれますね」
ただし、前述の初心者向け「海岸コース」に出すことはまだできないという。
「おとなしくなったとは言え、いざ“スイッチ”が入ってしまったら……という危うさがまだありますからね。そんなにビュッと行くことはないと思うんですが、それでもいざ走っちゃうとGIを勝つくらいの脚を持った馬ですから」
競馬ファンと乗馬ファンに愛されて
前がきをして今にも走り出しそう、乗馬としてまだまだ現役バリバリだ 【スポーツナビ】
「ハハッ(笑)、まだまだ元気いっぱいですからね。人気もあるし、よく働いてくれる。ウチの看板馬ですよ。その分、オーバーワークにならないように気をつけないと」
今でもニンジンを持って訪ねてくる競馬ファンや、僕のように取材で訪れる人もいるという。そうしてエイシンチャンプは、競馬ファン、乗馬ファン双方から愛されて第2の生活を送っている。種牡馬としても華々しい活躍をして後世に血を残している同級生のネオユニヴァースと比べれば、確かに地味な生活かもしれない。それでも、エイシンチャンプはネオユニヴァースと同じくらい幸せに生きている――堂々と歩いていく彼の後姿を追いながら、僕はそう思った。
(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)
エイシンチャンプ
生涯成績 41戦5勝(JRA34戦4勝、地方7戦1勝)
獲得賞金 2億7387万8000円
主な勝ち鞍 02年GI朝日杯フューチュリティステークス、03年GII弥生賞、06年大井記念
受賞歴 02年JRA賞最優秀2歳牡馬
取材協力 一宮乗馬センター
千葉県長生郡一宮町一宮9963
TEL:0475−42−2851
営業時間 9:00〜17:00(サマータイムあり)
定休日 不定休
http://www.jouba.jrao.ne.jp/club/chiba/1600.html