拡大するリーガの2強体制と貧富の差=リーグの魅力とスペクタクルの行方は…

異なるプレースタイルの構築に取り組むマドリー

開幕戦でいきなり決勝点を決めたイスコ(左)。彼のようなスター選手が今季もリーガを盛り上げる 【Real Madrid via Getty Images】

 そろそろフットボールの話に移ろう。ジョゼ・モリーニョがチェルシーへ去り、より平穏を好むカルロ・アンチェロッティがレアル・マドリーの監督に就任したことで、今季のリーガではジャッジへの不満やライバルとの舌戦といったピッチ外の話題が減り、より試合やプレー内容に関する話題が中心となるのではないか。

 レアル・マドリーはアンチェロッティの下で異なるプレースタイルの構築に取り組んでいる。ベイルの加入有無によってシステムやメンバー構成が変わってくるが、今季は以前ほど縦に速い攻撃ばかりに傾倒せず、より見る者を楽しませる連係プレーが見られる機会が増えるはずだ。

 ベイルが加入した場合、先発から外れるのはルカ・モドリッチか、カリム・ベンゼマか。いずれにせよアンチェロッティは4バックとピボーテ2人(1人は守備専門、もう1人はオーガナイザー)、そして2トップを起用することが予想される。2列目のインサイドMFにはマラガから獲得したスペインの未来を背負う若き天才、イスコが定位置をつかむはずだ。

徐々に信頼をつかみつつあるマルティーノ

 バルセロナは難しい夏を過ごした。新加入のネイマールに注目が集まるさなか、病気を再発させたティト・ビラノバ監督が退任を余儀なくされ、急きょヘラルド“タタ”マルティーノ新監督を招へいすることになった。

 リオネル・メッシと同じアルゼンチンのロサリオ出身で、ともに地元クラブのニューウェルス・オールドボーイズ出身であるマルティーノは、南米での実績は十分な反面、ヨーロッパでの指導経験が皆無。そのため、当初はカタルーニャのメディアやファンにとって未知数な存在だった。

 その後、徐々に好印象を与えはじめている彼は、何年も前から補強の必要性が訴えられているセンターバック(CB)の獲得を急がず、少なくとも12月までは現有戦力を信頼することを選んだ。

 マルティーノは新たに外から補強するより、リハビリ中のカルレス・プジョルが復帰するのを待つ方が得策だと考えている。それに彼は、プレシーズン中に18歳のカメルーン人CB、バニャックを積極的に試していた。

 CB以外にも、バルセロナではチアゴ・アルカンタラ(現バイエルン)、ジェラール・デウロフェウ(現エバートン)、ダビド・ビジャ(現アトレティコ・マドリー)らが抜け、ダニエウ・アウベスにも衰えが見られるチームの選手層に疑いの目が向けられている。今季限りでビクトル・バルデスの退団が決まっているGKもそうだ。

オフにW杯を控える重要なシーズン

 一方、オフにワールドカップ(W杯)を控える今季は選手たちにとってモチベーションに事欠かない1年となる。とりわけW杯に懸ける気持ちが強いメッシが充実したシーズンを送るようであれば、バルセロナに不可能はないと言えよう。

 メッシやクリスティアーノ・ロナウド、アンドレス・イニエスタ、シャビ・エルナンデス、イスコといったスター選手たちは、貧富の差が広がり続けるリーガにおいて、引き続きわれわれがスペクタクルとしてのフットボールを堪能できることを保証してくれる。

 問題が山積みではあるが、それでもリーガは魅力的なリーグであり続けているのだ。

<了>

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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