拡大するリーガの2強体制と貧富の差=リーグの魅力とスペクタクルの行方は…
2強とそのほかの間で広がる経済格差
ネイマール(写真)に5700万ユーロを支払ったバルサのように、選手補強に大金をつぎ込めるクラブは少ない 【Getty Images】
2強とそのほかの経済格差が広がり続ける近年のリーガは、バルセロナとレアル・マドリーが国内リーグの試合でさしたる苦戦を強いられることなく、チャンピオンズリーグ(CL)に力を注げる環境を保証している。
一方、そのほかの18チームは実質的にCLやヨーロッパリーグ(EL)の出場権獲得を最大の目標とするか、ただ2部降格を逃れるためだけに戦うことしかできない。
もともと10億ユーロ(約1320億円)にも上る多額の負債を抱えていた上、さらにスペインを襲った経済危機の影響をもろに受けたため、これらのクラブは年々競争力を失ってきている。結果として有能な選手の大半はイングランドや他国のリーグへと移住する。もしくはレアル・マドリーかバルセロナに引き抜かれている。
経済的事情からエース級を軒並み放出
たとえばセビージャはエースストライカーのアルバロ・ネグレドとウイングのヘスス・ナバスを失い(両者はともにマンチェスター・シティへ移籍)、バレンシアはロベルト・ソルダード(現トッテナム)を放出した。アトレティコ・マドリーはラダメル・ファルカオ(現モナコ)に続き、アルダ・トゥランやアドリアン・ロペス、今夏加入したばかりのマルティン・デミチェリスまで手放す可能性がある。レアル・ソシエダはイジャラメンディをレアル・マドリーに引き抜かれ、アスレティック・ビルバオはフェルナンド・ジョレンテ(現ユベントス)を失っている。
優勝争いが2強の一騎打ちとなっている現状は、もしそのいずれかがスタートでつまずいてしまえば、昨季のようにシーズンの折り返しを待たずして優勝チームが決まってしまう危険性もはらんでいる。そうなった場合、残る試合は無意味で魅力に欠けるものになってしまう。
不平等に分配されているテレビ放映権収入
プレミアリーグが年間21億ユーロ(約2774億円)もの放映権収入を得ている一方、リーガのそれは8億ユーロ(約1050億円)にしか満たない。にもかかわらず、バルセロナとレアル・マドリーはプレミアリーグで最も高額の放映権料を得ているクラブの倍に当たる額を受け取り、リーガの放映権収入を独占している。その傍ら、アトレティコ・マドリー、バレンシアら第2勢力に割り当てられる額はプレミアリーグの最下位チームよりも少ない。
こうした状況を変えるべく、スペインフットボール協会(RFEF)のアンヘル・マリア・ビジャール会長は、長らくリーグの魅力と競争力を高めるためのシステムを模索してきた。
だが、恐らくメディアプロ社とソヘカブレ社が各クラブと個別に放映権契約を結んでいる現状、大きな改革を行うことは難しいだろう。プロフットボールリーグ(LFP)が放映権を一括管理し、プレミアリーグをモデルとした全クラブに平等な放映権収入の分配方法を導入するには、少なくともそれらの契約が満了する2016年を待たなければならない。