ヤングなでしこは「世界一」になれるのか=U−20女子ワールドカップ展望

砂坂美紀

2年前のU−17女子W杯では準優勝

司令塔として攻撃のタクトを振る田中陽 【写真:杉本哲大/アフロスポーツ】

 U−20女子ワールドカップ(W杯)が8月19日から開幕する。FIFA(国際サッカー連盟)が主催する女子の国際大会では、初の日本開催となる。U−20日本女子代表「ヤングなでしこ」たちの戦いはもちろん、女子サッカー界の未来のスターが誕生する瞬間を、間近で楽しめるチャンスだ。

 ヤングなでしこたちは、目標を「世界一」に定める。それには大きな根拠がある。中心メンバーは2年前のU−17女子W杯で準優勝を経験した。世界トップレベルの技術を披露しつつ、決勝では先行しながらも韓国に追いつかれ、PK戦の末に敗れた。「持ち帰った銀メダルには、うれしさよりも悔しさが詰まっている」とは、当時のチームでも現在のU−20でも左サイドバックを務める浜田遥だ。彼女をはじめ多くの選手たちは、銀メダルを見つめながら、それぞれが成長を誓い合ってきた。

 また、前回(2010年)に続き、2度目のU−20W杯に挑む選手たちもいる。キャプテンのMF藤田のぞみと、MFまたはセンターバックで起用される木下栞の2人だ。彼女たちは2年前、グループステージ敗退という屈辱を味わった。「決勝トーナメントに行けなかった悔しさもあるし、今度は優勝したい」(木下)と、リベンジに懸ける意気込みは強い。

 ヤングなでしこを率いる指揮官は、元日本代表FWの吉田弘監督だ。03年から04年にはなでしこジャパンのコーチを務め、07年以降はU−16、U−17女子代表監督を歴任。11年からはU−19、U−20女子代表監督も兼任している。吉田監督は今大会に向けて、「3点取られても、5点取るような面白いゲームがしたい」と、超攻撃的サッカーを掲げる。指揮官の言葉を裏付けるように、今大会の出場権を懸けた昨年のU−19アジア女子選手権では、5試合で13得点を挙げて勝ち抜いてきた。

攻撃のキーは田中陽と猶本

 ところがW杯開幕直前、8月13日に行われたカナダU−20女子代表との親善試合で、ヤングなでしこは2−2と引き分けてしまった。中盤はボールを支配できていたものの、ゴール前での崩しやサイドからの展開が少なく、課題を残したチームであると印象づけられた。だが、浜田は、「(初戦の相手である)メキシコが見ていると思うので、この試合ではあまり上がらないようにと、監督から言われていました」と、持ち味である果敢なオーバーラップが見られなかった理由を明かした。

 では、ヤングなでしこは本番で、どのような戦いをするのだろうか。これまでどおり、フォーメーションは4−2−3−1を基本に臨むだろう。ボランチの猶本光がボールをさばき、トップ下の田中陽子が司令塔の役割を果たして攻撃のタクトを振る。この縦関係の2人がキーになって攻撃を展開していくはずだ。また、先述した2010年のU−17女子W杯、準決勝の北朝鮮戦で5人抜きドリブルからのゴールを披露し一躍有名になった左ウイングの横山久美、日本女子サッカーリーグ2部(チャレンジリーグ)で得点王争いをリードする170センチの大型FW道上彩花ら、個人技に長けた攻撃陣が絶妙な距離感で絡み合ってゴールを狙う。

 また、弱冠16歳のセンターバック土光真代にも注目したい。なでしこリーグの名門、日テレ・ベレーザに登録された今季、開幕からレギュラーとして出場を続け、リーグ最少失点に貢献している。土光は唯一の飛び級招集になったが、吉田監督は「年齢は下だが、守備的な部分でいいものを持っている。(なでしこリーグで)スタメンとして出ている試合感覚を生かしてもらいたい」と、その活躍に期待を寄せる。

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著者プロフィール

1975年生まれ。福岡県出身。高校時代は女子サッカークラブ「大分ミラクルレディース」でプレー。97年、大学在学中よりフリーライターに。国内外の女子サッカーを約15年取材し続けている。著書『なでしこ つなぐ絆 夢を追い続けた女子サッカー30年の軌跡』(集英社)。共著書『なでしこゴール! 女子のためのサッカーの本』(講談社・日本サッカー協会推薦図書、全国学校図書館協議会選定図書)。『なでしこ力』『なでしこ力 次へ』(佐々木則夫著・講談社)編集協力

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