ロンドン五輪目前! ボルト、劉翔ら世界のスターたちの現状は?=陸上

K Ken 中村

絶対王者に思われたボルトも、ロンドン五輪での2冠連覇達成に黄色信号が灯っている 【写真は共同】

 開幕まで残りわずかに迫ったロンドン五輪。中でも、大会後半に行われる陸上は、多くのドラマが生まれる競技の一つである。毎回、世界のスーパースターたちが驚くべき記録とパフォーマンスを見せてくれる。そこで、ロンドン五輪を目前に、世界のトップ選手たちの現状を紹介したい。

ボルト、連覇に黄色信号

 五輪で短距離2冠の連覇はいまだない。カール・ルイス(米国)は100メートルでは1984年ロサンゼルス大会、88年ソウル大会を連覇したが、200メートルはソウル大会2位に終わった。その2冠連覇が、ウサイン・ボルト(ジャマイカ)には可能である。

 しかし、最近その連覇に黄色信号が灯った。今年ボルトは成績が安定していない。初戦は9秒82で走ったが、その20日後には10秒04に沈んだ。その後、9秒76と9秒79で走り、復活か? とファンを安堵(あんど)させたが、ジャマイカ選手権(6月)では、また不安を残す結果となった。2011年世界選手権(韓国)で100メートルを制したヨハン・ブレーク(ジャマイカ)に、100、200両種目とも敗れたのだ。

 ジャマイカ選手権100メートル2位に終わったボルトのタイムは9秒86だった。08年のジャマイカ選手権は9秒85、09年は9秒86だったので、今年のタイムはベストの年に比べてそんなに遅いわけではない。ただ、昨年までのベストが9秒82だったブレークが、今年9秒75と一段と力をつけてきた。つまり、“ボルトもベストの状態でないと勝てない時代”がやってきたのだ。故に、五輪でもボルトはベストでないと勝てないと考えられる。おそらく3、4年前のようなぶっちぎりの優勝はないだろう。
 またボルトは、ジャマイカ選手権後には故障の治療でミュンヘンの専門医を訪れ、ダイヤモンドリーグのモナコ大会の欠場を発表した。果たして、五輪に間に合うのか――。さらなる不安要素が加わった。

 一方、米国勢も上昇気流に乗っている。アテネ五輪覇者のジャスティン・ガトリンは全米五輪選考会で9秒80の自己新を記録した。07年世界選手権短距離2冠のタイソン・ゲイは、北京五輪ではケガで実力を発揮できなかったが、今は昨年夏の手術から本格的に復活している。自己ベストの9秒69のレベルまで戻れば、ジャマイカ勢を脅かす存在になるだろう。

劉翔vs.米国勢、ロブレスにも注目

 男子110メートルハードルで五輪を連覇した選手はリー・カルホーン(米国)とロジャー・キングダム(米国)の2人いるが、1大会あけて、2度目の金メダルを獲得した選手はいない。今回それに挑むのが、04年アテネ五輪で優勝した劉翔(中国)。4年前の地元・北京五輪では連覇が期待されながら、ケガで棄権した。しかし、ロンドン五輪を控えた今年は絶好調、故に本命といえる。

 その一方で、ハードル王国の米国は3大会連続で五輪の金メダルを逃している。これは、五輪史上初めてのことである。今季は世界記録保持者のダイロン・ロブレス(キューバ)の調子が上がってこないので、劉翔の金メダルにストップをかけるとすればアリエス・メリットとジェイソン・リチャードソンの米国勢だ。メリットは今年の世界室内で劉翔に勝ち、リチャードソンは昨年の世界選手権で劉翔に勝っている。しかし、今季屋外では劉翔に分がある。上海とユージーンのダイヤモンドリーグでは、ともに劉翔がメリットとリッチャードソンを破って優勝した。しかし、この二人も全米五輪選考会では12秒台を記録して、現在絶好調なのだ。

 劉翔が歴史を作るか? それとも米国が16年振りの金メダルを獲得するのか? もし、ロブレスが勝てば3人目の連覇、そして米国選手以外では初めてとなる。

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著者プロフィール

三重県生まれ。カリフォルニア大学大学院物理学部博士課程修了。ATFS(世界陸上競技統計者協会)会員。IAAF(国際陸上競技連盟)出版物、Osaka2007、「陸上競技マガジン」「月刊陸上競技」などの媒体において日英両語で精力的な執筆活動の傍ら「Track and Field News」「Athletics International」「Running Stats」など欧米雑誌の通信員も務める。06年世界クロカン福岡大会報道部を経て、07年大阪世界陸上プレス・チーフ代理を務める。15回の世界陸上、8回の欧州選手権などメジャー大会に神出鬼没。

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