ロンドン五輪目前! ボルト、劉翔ら世界のスターたちの現状は?=陸上

K Ken 中村

ケネニサ・ベケレ、1万メートル3連覇へ

3連覇を狙うベケレ(右)だが、今季は成績が安定していない 【Getty Images】

 五輪の長距離種目を見てみると、連覇の歴史はあるが、3連覇はいまだにない。皇帝ハイレ・ゲブレシラシエ(エチオピア)も、空飛ぶフィンランド人のパーボ・ヌルミとラッセ・ビレンも、そして人間機関車エミル・ザトペック(当時チェコスロバキア)も達成できなかった1万メートル3連覇。しかし、男子1万メートルで2連覇中のケネニサ・ベケレ(エチオピア)にはそのチャンスがある。

 が、そのベケレも03年から世界選手権で4連覇中だったが、昨年の世界選手権は故障からカムバックの途中だったため、途中棄権に終わり、続いていた連勝記録が12で途絶えた。そして今季、仕上がりが遅れているベケレ。5月前半からトラック・レースを走っているが、毎回最後のスパート合戦で遅れをとっていた。

 6月22日に英国バーミンガムで行われた1万メートルでは弟のタリク・ベケレ、五輪連続銀メダリストのセレシ・シヒン(ともにエチオピア)を破り優勝。だが、7月6日の5000メートルでは今季初めて12分台を記録したが9位と、安定した結果が残せていない。しかし昨年も、世界選手権で連勝がストップした直後、ブリュッセルで行われた1万メートルでは26分4秒と、08年以来最速のタイムを記録しているだけに、その地力の強さは計り知れない。一気にベストの状態に仕上げてくる可能性もある。

 一方のケニア勢は、5000メートルでも1万メートルでも五輪での優勝は一度しかない。過去2回の五輪で見ても、銅メダル1個。世界選手権を見てみると、1万メートルで活躍の目立つのは、日本の実業団に所属する選手たちだ。マーティン・マサシ(スズキ浜松AC)は2度(07、11年)ケニア勢最上位になっている。今回、五輪に出場するケニア選手はエスビー食品所属のビダン・カロキ。果たして、2個目の金メダルをもたらすことができるだろうか?

 最後に五輪男子1万メートルでアフリカ勢以外の選手が最後にメダルを獲得したのは88年。しかし、今年は自己ベストが26分48秒で世界選手権7位のゲーレン・ラップ(米国)にメダルのチャンスがあることを付け加えておく。

女子長距離 ケニア初の金メダルなるか?

 信じがたいことだが、五輪の女子長距離でケニア選手が金メダルを獲得したことは一度もない。しかも、五輪女子1万メートルにいたってはメダルさえもないのだ。しかし、昨年の世界選手権の1万メートルではメダル独占、5000メートルでも金、銀メダルを獲得。つまりケニア女子にとって、ロンドン五輪は絶好の機会である。

 一方、エチオピアにとって世界選手権での惨敗は屈辱以外なにものでもなかった。敗因の一つは、エースのティルネッシュ・ディババが世界選手権を欠場したからである。そのディババ不在の世界選手権でケニアのエースであるビビアン・チェルイヨットは長距離2冠に輝いた。

 しかし、今年ディババは見事に復活、今季は4戦全勝で1万メートルでは今季最速の30分24秒39と、08年以来最速のタイムも記録した。一方のチェルイヨットも好調、今季初戦のクロカンでは2位に終わったが、その後5連勝、5000メートルでは今季最速の14分35秒62を記録している。

 1万メートルでは一度も対戦していない二人だが、5000メートルではディババの7戦全勝。しかし、いずれもチェルイヨットが一流選手になる前の話である。もし、ディババが両種目を連覇すれば、女子では初めて、男子も含めてラッセ・ビレン(フィンランド)以来の長距離2種目連覇となる。もしチェルイヨットが1種目でも勝てば、ケニア女子長距離(マラソンも含めて)初金メダルとなる。

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著者プロフィール

三重県生まれ。カリフォルニア大学大学院物理学部博士課程修了。ATFS(世界陸上競技統計者協会)会員。IAAF(国際陸上競技連盟)出版物、Osaka2007、「陸上競技マガジン」「月刊陸上競技」などの媒体において日英両語で精力的な執筆活動の傍ら「Track and Field News」「Athletics International」「Running Stats」など欧米雑誌の通信員も務める。06年世界クロカン福岡大会報道部を経て、07年大阪世界陸上プレス・チーフ代理を務める。15回の世界陸上、8回の欧州選手権などメジャー大会に神出鬼没。

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