「1番・イチロー」を救った川崎の存在

木本大志

イチローの打順を巡る熱い議論

慣れ親しんだ「1番」に戻ったイチロー。再び存在感を証明することができるか 【Getty Images】

 イチローが今季初めてスタメンを外れた5月30日、テキサスの日中の気温は35度近かった。午後5時を過ぎてなお、一向に日差しが弱まる気配はなく、ダッグアウトで始まった監督会見は、暑さの逃げ場がない、まるで蒸し風呂のような状態の中で行われたが、交わされた議論はさらに熱く、地元記者らはイチローの打順を巡って、エリク・ウェッジ監督に質問を重ねていた。

 ある記者など、「あさって(1日)には、スタメンに復帰すると思うが、そのときの打順は何番だ?」と、まるで打順の変更を前提としているかのような聞き方をしている。その時、監督は「その日のラインナップまでは決めていない」と曖昧に言った。

 この時点では、「3番には向かない。打順を変えろ」とブログなどで訴えていた米メディアも、あさっての1番復帰を予想していなかったが、思えば「決めていない」がヒントだった。

複雑な思いを語るイチロー「未来のことは分からない」

「3番・イチロー」は、ウェッジ監督が、今年の打線の核として、オフの間に固めた構想。いくらなんでも2カ月では変えないだろうと見られていたものの、ウェッジ監督にそもそも、そこまでの覚悟はなかったのである。

 1番に復帰してから9試合が過ぎた。マリナーズが6人の投手の継投で、ノーヒット・ノーランを達成した8日、唯一の得点を挙げたのがイチローだった。7回、2死ランナーなしで打席に入ると、バットを折りながらもセカンドゴロ内野安打で出塁し、すかさず盗塁を決めたあと、カイル・シーガーのタイムリーでホームにかえっている。
 6日のエンゼルス戦でも、6回に1点差に迫るタイムリーを放ったあと、1点リードして迎えた8回には、値千金の4号ソロを放って、イチローらしい活躍を見せた。

 そこだけを切り取れば、イチローが一番に復帰してから生き生きしていると見ることもできるが、1番復帰そのものは当初、ポジティブに捉えられていたわけではない。そもそもが、消去法なのである。3番では、期待されたような結果を残せなかった。1番復帰は、リードオフマンがいないからというより、3番には向かない、という結論が背後ににじんでいた。

 イチローの言葉からも、複雑な思いがのぞく。
「日々、勝負ですから。そう(1番に立ち続ける)でありたいと思いますが未来のことは分からない」

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