「エリア51」、イチローが証明しなければいけないもうひとつのこと=2012MLB日本開幕戦

木本大志

神秘性と隙のない守備こそ「エリア51」のゆえん

昨シーズン、米国のファンを魅了しつづけた「エリア51」が影をひそめたイチロー 【Getty Images】

 いつの頃からか、セーフコ・フィールドのライトは、「エリア51」と呼ばれるようになった。

 イチローの背番号に由来するが、エリア51そのものは、元々ネバダ州ラスベガス郊外にある米空軍基地の俗称だ。実態がほとんど公表されておらず、墜落したUFOが運び込まれて研究されているとか、宇宙人の死体が回収されたとか、ミステリアスな噂(うわさ)が後を絶えないが、そんな神秘性こそ、イチローのプレースタイルと重なったのかもしれない。

 エリア51はまた、厳重な警備で知られ、イチローの隙のない守備ともイメージがマッチしたのだろう。

データから見えてくる守備の“異変”

 ただ昨季、データ的に見ればその「エリア51」の防御に異変が起きた。

 例えば、UZR(アルティメット・ゾーン・レイティング)という1人の選手が平均的な選手に比べてどれだけ失点を防いだかという指標によれば、その数値は−5.7で、イチローが守っていることで失点が増えた、という結果が出ている。

 思い出すのは、二つのシーン。

 一つは、昨年4月4日のレンジャーズ戦でのプレーだ。2回2死一塁の場面で、ライトを守るイチローの前にライナー性のフライが上がったが、これをイチローは体に当てながら捕球できず、次打者の三塁打で2人の走者が生還している。あの時点でUZRの数値が跳ね上がった。

 もう一つは、テキサスで行われた8月9日の試合。マリナーズが1点をリードして迎えた8回裏、レンジャーズは2死二塁の場面でヨービット・トレアルバが、右中間を破る同点二塁打を放っている。

 このとき、地元記者らは、「前のイチローなら、捕れたんじゃないか」とつぶやきあっていた。難しいところだが、少なくともあの打球は、彼らの頭の中にあるイチローの守備範囲内だったようだ。

 UZRの信頼度に関して言えば、かつては目測で落下地点などを記録し、データの基礎としていたのに対し、打球の飛んだ位置をほぼ誤差なく記録できる「FieldF/X」というカメラシステムが開発されたことによって、今後、より精度の高い守備指標の一つになると見られている。

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