イチロー検証<その1>:ボール球に手を出す確率とストライクゾーンの広がり
カギとなった6月10日
不振が深刻で6月10日(現地時間)にはスタメンを外れたイチロー。まず、ボール球へ手を出す確率に注目した 【Getty Images】
5月の月間打率が2割1分に終わり、6月に入っても、最初の9試合のうち6試合で無安打に終わると、6月10日、エリク・ウェッジ監督はイチローをスタメンから外した。
それはこれまでの休養とは意を異にし、不振という含みがあったことを、本人も否定していない。
「現段階ではなかなか(チームの)力になれていないことがつらい」
翌日、最初の2打席は凡退。その時点で、どれほどのプレッシャーがかかったのか想像に難くないが、3打席目に三塁打を放つと、4打席目にもヒットを記録。結局、11日からの10試合で19安打を放ち、V字回復を見せた。
わずか1日で何があったのか。毎日のように行なわれているという修正の中で、どの引き出しを開けたのか。
その前に一旦話を5月に戻すが、仮に5月が例年通りの成績だったとしたら、今年はどんなシーズンだったのか。
過去10年間の5月は、1188打数431安打(3割6分3厘)だったので、平均安打は約43本。今年との差は21本なので、5月が例年通りであったなら、今年もすでに年間200安打を達成していたことになる。
現実は、今季どころか、過去を見ても最低の月となったのだが、そのころ、イチローの状態を問われるとウェッジ監督は、「少し積極的過ぎるかな」と遠回しな表現でイチローの打撃を分析していた。ストレートに表現すれば、「ボール球に手を出している」ということだろう。
ボール球に手を出す確率が上昇
リサーチは、MLB公式ページの「GAMEDAY」を利用して行い、まず、5月全体を調べて見ると、イチローがボールに手を出す確率は36.7%だった。これは、今年の平均とさほど変わらないものの、打率が下降していった5月16日から31日までの15試合では40.4%に上がり、この間の打率は1割8分6厘(59打数11安打)だった。
では、ボールを振る確率の上昇と打率の低下は連動するのか。
マリナーズのクリス・チャンブリス打撃コーチは、「単純に考えれば、ボールに手を出すケースが増えれば、不利なカウントで勝負をせざるを得ない、あるいは、凡打になる可能性が高くなる」と話したが、データを示した上でイチローにも当てはまるかと聞けば、首をひねった。
「どうだろう。そうは思わない」