タガノアシュラ悲願のGI初制覇へ 「強い馬つくりたい」元騎手が歩んだ道
衝撃に襲われたJRA遠征
“タガノ”のGI初制覇の期待を背負うタガノアシュラ 【netkeiba.com】
「この世代で一番期待していた馬なんです」
そう語るのは宇治田原優駿ステーブル調教主任の青山氏。タガノアシュラのオーナー系列牧場で、冠名「タガノ」の馬を中心に調教を取り仕切っている。
11年前までは地方競馬の園田・姫路で騎手をしていた。地元で重賞も勝ったが、20代半ばにして騎手引退の決意をした。それは、JRA遠征で馬の力の差を感じたことがきっかけだった。
「折り合いのつく園田の馬での遠征だったので、芝2000mがいいだろうとエリカ賞に出走したんです。ところがスタートからいきなり離されていって、折り合うどころか追っ付け通しだったんです。レース前は『着は拾えるんじゃないか』と思っていたのですが、大きく離れた最下位でした。どんだけ離されてまうんやろ……と思いましたね」
希望を胸に挑んだJRA遠征は、これまで味わったことのない衝撃に襲われた。
約半年後、再びJRA遠征のチャンスが巡ってきて、リベンジに燃えた。
「今度は道中もいい感じに運べて、脚をためることもできました。でも手応えが良すぎたことで舞い上がって、小回りの園田競馬場の感覚で3コーナーから仕掛けてしまったんです。最後は止まってしまい、11着。自分の経験のなさと甘さを感じました。この頃からJRAってすごいなと意識するようになったんです」
のちにJRAに移籍する小牧太騎手、岩田康誠騎手、赤木高太郎騎手が園田・姫路で上位を張っていた頃だった。
「俺は騎手としての実績がなかったから、JRAで調教助手になって強い馬づくりをしたいと思いました」
当時は地方競馬で騎手経験があってもJRAで厩務員や調教助手になるには、基本的に牧場での勤務経験を積んだのち、JRA競馬学校厩務員課程に入学する必要があったという。
「そのために宇治田原優駿ステーブルで働き始めたんです」