タガノアシュラ悲願のGI初制覇へ 「強い馬つくりたい」元騎手が歩んだ道
引退予定の馬で重賞3勝
元園田ジョッキーの青山裕一氏、JRA馬の強さを目の当たりにしたことが人生の転機に(撮影:大恵陽子) 【netkeiba.com】
「最後に園田で走らせてもらえませんか?」
オーナーにお願いし、かつて自身が所属し世話になった厩舎へ預けてもらった。すると、わずか半年の間に地元重賞3勝を挙げる大活躍をした。
こういったやりがいを味わううち、青山氏は宇治田原優駿ステーブルで馬づくりを極めることを決心し、牧場の馬房数拡大のタイミングも相まって調教主任に就任した。
園田・姫路の重賞では有力馬に冠名「タガノ」の馬が名を連ねることが多い。さらに一昨年にはJRAから移籍したタガノジンガロが、かきつばた記念(JpnIII)を制覇した。
「移籍2戦目で、今後のローテーション選択へのものさしの一戦だった」というレースでいきなり勝ち、うれしいサプライズをもたらした。
「俺は園田の出身やから、園田の馬でダートグレードレースを勝ちたいし、少しでも盛り上がるきっかけになってくれたらうれしいですよね」
15歳から下乗りをしていた古巣をいまも大切にしている。
武豊に託すWメモリアル
平地GI完全制覇が懸かっている武豊に、タガノの悲願を託す 【netkeiba.com】
「タガノの馬でGIを勝ちたいんです」
意外にも冠名「タガノ」の馬はGI未勝利だ。今週末、朝日杯FSに送り込むタガノアシュラはその期待を背負う。
「能力的にはやれると思うんです。1歳の12月という早い時期に北海道からこちらへ移動してきた馬です。調教メニューづくりなどのサポートはしますが、牧場でタガノアシュラの調教にまたがっているのは、タガノの馬を集めた馬房の厩舎長です。
彼とは8年くらいずっと一緒にやっているんですが、愛馬心に溢れているんです。厩舎長が馬の気持ちを大切にする姿は他のスタッフにもいい影響を与えていて、調教で力んだり尻っぱねをする馬が減りました。タガノアシュラも血統的に少しうるさいところがありますが、そんな彼がしっかりやってくれているから、あとはGIなので枠や展開など運が味方についてくれればと思います」
そしてもう一つ、笑顔でこう付け加えた。
「ユタカさん(武豊騎手)が乗ってくれてうれしいです。平地GI完全制覇が懸かっている中でタガノアシュラを選んでくれたんですからね」
小学生の頃、ブラウン管越しに見ていたカリスマと今は同じ馬に携わっている。
「本当はこのインタビュー、会長(八木良司オーナー)の馬でGIを勝ってからだったら胸を張れるんですけどね」
その言葉はカッコをつけているわけではなく、「強い馬をつくりたい」という一心で歩んできた証だろう。今週末、本当に胸を張れる結果となることを期待したい。