レアルとバルサ、明暗を分けている差は? 玉乃淳のクラシコプレビュー

玉乃淳

あなたはレアル派、バルサ派?

あなたはレアル・マドリーとバルセロナ、どちらがお好き? 【写真:ロイター/アフロ】

 突然ですが、あなたはレアル・マドリーとバルセロナ、どちらが好きですか? その理由は?

 僕は「最近」、レアルが大好きです。かつて異国の地スペインで孤独と厳しい現実に直面した思春期に、サンティアゴ・ベルナベウ(レアルのホームスタジアム)で現在レアルを率いるジネディーヌ・ジダンの優雅なプレーに魅了され、心が救われた過去の原体験がそう思わせるのかもしれません。アトレティコ・マドリーのユースチームに所属していたころの話です。

 しかし何を隠そう、ちょっと前まではバルサの方が好きでした。あのパス回しに魅せられないサッカーファンなどいないでしょう。「リオネル・メッシ? アンドレス・イニエスタ?……大好きです」と、胸を張って言えますよね。

 でもこれ、レアルファンの前ではご法度。すぐに鼻で笑われ、この先も会うたびに永遠にからかわれることでしょう。逆にバルセロナ在住の友人は、こんな僕の態度に穏やかではありません。上品とはいえない言葉で攻め立てます。「信じられない」と。

クラシコが“死闘”になる背景

02年のバルサホームのクラシコでは、禁断の移籍を行ったフィーゴに対し、豚の頭などが投げ込まれた 【Getty Images】

 ファンも舌戦を繰り広げる“エル・クラシコ(伝統の一戦)”。なぜ毎試合、これほどまでの“死闘”となるのでしょうか? バルセロナからレアルへ禁断の移籍をして、裏切り者とされたルイス・フィーゴの飲食店が燃やされたり、豚の頭がピッチに投げ込まれたり、まだ年端もいかない子供たちが中指を立てて相手に罵声を浴びせたり……。

 この両者の争いは、単に国を代表する2大都市の対抗というだけでなく、各地方の“民族意識”が高いお国柄がその背景にあります。バルセロナはスペイン北東部のカタルーニャ地方に位置します。独自の言語や伝統、習慣をもつこの地方は、民族意識が非常に高く、そのうえ1939年に成立し、70年代後半まで続いたフランコ独裁政権時代にカタルーニャ語の使用を禁じられるなど、弾圧された歴史をもちます。

 そのフランコ政権が1950年代に政治的に利用するため「お気に入りのチーム」にするなど、支配層に好まれたのがレアル・マドリーでした。よって、ピッチ内外でデッドヒートを繰り広げることはもはや必至。民族の伝統や歴史的な背景、さまざまな感情が交錯する、ひとつのゲームを超えたドラマとなるわけです。僕のような平和でのんきな者の意見が通じるわけがありません。

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著者プロフィール

 ヴェルディ下部組織で育ち、15歳で単身スペインに渡り、アトレティコ・マドリーのユースチームに加入。スペイン代表のフェルナンド・トーレスと2トップを形成した。帰国後、Jリーグ数チームに所属し、25歳の若さで現役を引退。史上最年少のサッカー解説者に就任し、多数のテレビ番組に出演した。『マツコ&有吉の怒り新党(2014年12月3日)』や、アトレティコ在籍時代に培ったスペイン語力を評価され、海外レポートも多数。  また、自身がプロデュースする「Football×Career」をテーマに発信するWEBメディア『TAMAJUN Journal(タマジュンジャーナル)』を2016年4月に開設した。Twitterのアカウントは、@JUNTAMANO1

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