レアルとバルサ、明暗を分けている差は? 玉乃淳のクラシコプレビュー

玉乃淳

チームカラーも全く異なる両者

サムエル・ウムティティ(写真)ら新加入選手はどこかバルサらしくない!? 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 それぞれがもつ背景の違いからなのか、両者はチームカラーも全く異なります。これほど分かりやすい特色の違いも珍しいでしょう。ソシオと呼ばれる市民のオーナー会員から成り立つバルサは、カンテラ(下部組織)育ちの自前の選手が中盤を構成し、前線に並べたスター選手を加えたチーム作りで、ピッチを広く使ってボールを走らせるサッカーをします。

 これに対して、レアルは世界一の収入を背景に、国内外から集めた世界最高の選手たちを各ポジションに配す、まさに“銀河系軍団”。チーム作りの方針の良し悪しという次元を超えて、両者のカラーは非常に濃く鮮明で、どちらも世界中のファンから等しく支持を得ています。

 このカラーに忠実なチーム作りをしているかどうかが、今シーズンの両者の明暗を分けている気がします。シーズンを約3分の1終えた段階で、リーガではレアルに次ぐ2位につけるバルサですが、どこかピリっとしません。今季加入し、メンバーに名を連ねるサムエル・ウムティティ、アンドレ・ゴメス、リュカ・ディーニュ、パコ・アルカセル……。確かにスターではありますが、カンテラ出身でもなく、どこかバルサらしくありません。

 前線の3人(メッシ、ルイス・スアレス、ネイマール)の好不調や欠場がチーム力に直結してしまい、バルサは波に乗れていません。一方、好調を維持するレアルは、今季も「旬」なスーパースターを買い続け、無敗をキープしています。

 さかのぼれば、13年にメスト・エジルを放出してギャレス・ベイルを獲得、翌年にはアンヘル・ディ・マリアを放出してハメス・ロドリゲスを獲得したように、常に「旬」を求めるレアルは今季、ユベントスでスターとなったアルバロ・モラタを唯一の目玉補強として買い戻しました。現在ケガで離脱しているものの、彼のこれまでの活躍がチームの好調の一要因になっていることは言うまでもありません。チームを編成する上で、「らしさ」を出せているかどうかが、ここまでの成績に表れているのではないでしょうか。

カンプノウでもレアル優位?

今回のクラシコの勝者は優位と評されるレアルか、9万人を超える声援に後押しされるバルサか 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】

 好調を維持し、優位と思われるレアルですが、今回の舞台はカンプノウでの“エル・クラシコ”。メッシ、スアレス、ネイマールがカタルーニャの情熱を背負い、100パーセント死力をつくして戦うでしょう。本気になった彼らのすごみは想像を絶します。きっと不調と言われている、これまでとは違うバルサが見られるに違いありません。

 そして本気の三銃士を、レアルは前線に残したクリスティアーノ・ロナウドをのぞく10人で止めにかかるでしょう。両者の勝ち点差は現在6あるため、アウェーのレアルは引き分けでも万々歳なはずです。ひとたび守ったときの、憎らしいばかりの彼らの強さは、ジダン監督就任後、リーグ戦はアウェーで負けなしというデータにも裏打ちされています。

 そのジダンが、昨季4月のヨハン・クライフの追悼試合で監督として初のクラシコを完勝で飾ったり、クリスティアーノ・ロナウドが11月19日(現地時間、以下同)、ビセンテ・カルデロンでの最後のマドリーダービーをハットトリックで一蹴したりと、相手のメモリアルゲームにはめっぽう強いレアル。「持っている」“KY戦士”が、今回もこの“どアウェー”の状況を、わがもの顔で楽しむことでしょう。

 というわけで、試合前からなにかと話題の尽きない大注目の一戦は12月3日、カンプ・ノウにてキックオフです。優位と評されるレアルか、9万人を超える声援に後押しされるバルサか。現地でその勝敗の行方を見守る1人として、スポーツマンシップにのっとった、定められたルールで試合が行われることを切に祈ります。この試合、危険につき。

2/2ページ

著者プロフィール

 ヴェルディ下部組織で育ち、15歳で単身スペインに渡り、アトレティコ・マドリーのユースチームに加入。スペイン代表のフェルナンド・トーレスと2トップを形成した。帰国後、Jリーグ数チームに所属し、25歳の若さで現役を引退。史上最年少のサッカー解説者に就任し、多数のテレビ番組に出演した。『マツコ&有吉の怒り新党(2014年12月3日)』や、アトレティコ在籍時代に培ったスペイン語力を評価され、海外レポートも多数。  また、自身がプロデュースする「Football×Career」をテーマに発信するWEBメディア『TAMAJUN Journal(タマジュンジャーナル)』を2016年4月に開設した。Twitterのアカウントは、@JUNTAMANO1

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント