欧州強豪を追い詰めたラグビー日本代表 「日本人の良さが出ている」戦い方
7万人超の大観衆の前で勇敢に戦う
日本代表WTB福岡が見事なトライを奪い、7万人超の大観衆が静まり返った 【斉藤健仁】
9月にジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)が就任し、いよいよ2019年へと走り出したラグビー日本代表。11月5日の初戦はアルゼンチンに20対54と大敗したが、12日は強力なFWを擁するジョージアに敵地で28対22と競り勝ち、19日は欧州遠征、いや今年のクライマックスとも言える、欧州6カ国対抗の強豪の一つウェールズ戦を迎えた。
しかも対戦場所は、北半球の「ラグビーの聖地」の一つである「レッドドラゴン」ことウェールズのホーム、プリンシパリティスタジアム(旧ミレニアムスタジアム)だった。チケットはほぼ完売、7万3969人という大観衆の中で、ジェイミージャパンは勇敢に戦い、残り10秒まで30対30の同点だったが、相手にDG(ドロップゴール)を決められて30対33で惜敗した。
ただ、チームが本格的に準備してから1カ月にも満たない、そして23人中13人が2キャップ未満という若いチームが、先発の総キャップ数600を超える世界ランキング6位(日本代表は11位)の相手に完全アウェイの中で接戦を演じられたことは、今後のポテンシャル、伸びシロを大いに感じさせるには十分だった。
試合前から自信を語っていたジョセフHC
試合前の国歌斉唱で感極まるPR畠山(右から2人目)ら日本代表 【斉藤健仁】
さらに戦い方に関しても指揮官は「自分たちの戦術をしっかり賢く使って戦っていかないといけない。相手にいろんなパンチを繰り出していきたい」、CTB立川理道ゲームキャプテンも「自分たちの形やシステムを信じてやることが一番大事。相手をパニックにすれば勝機はあると思います」と自信をのぞかせていた。
ウェールズHC代行「プレッシャーがすごかった」
ウェールズのロブ・ハウリーHC代行(左)とサム・ウォーバートン主将は勝利したものの浮かない表情 【斉藤健仁】
「ハイパントを蹴ってキャッチできたらそれでいいし、相手がまた蹴ってきたらまたデコボコのところを攻めればいい。相手にキャッチされてもディフェンスで我慢して、カウンターアタックを仕掛ける」(松島)
ジョセフHCとトニー・ブラウンコーチのスーパーラグビーを制したコーチ陣が立てたプランを選手たちは最後まで信じてやり切ったことが大きかった。ウェールズのロブ・ハウリーHC代行は「日本はキッキングゲームでわれわれ以上にスペースを見つけていた。特にバックスリーのプレッシャーがすごかった。今日は日本代表がゲームをコントロールしていた」と舌を巻いた。
またアルゼンチン戦後、ジョセフHCは「もっとキックを蹴っていたら2〜3本トライを取れていた」と語っていたが、この試合では積極的にSO田村、CTB立川がスペースにキックを蹴り、WTB山田らバックスリーを走らせる。体格の大きな相手に、まともにぶつかるのではなく、キックを裏に蹴ることで手数をかけずトライを狙う意識も徹底していた。
山田の独走トライで反撃「ディフェンスのおかげ」
大舞台に強いWTB山田の独走トライが流れを変えた 【斉藤健仁】
それでも日本代表は、今度はアタックではなく前に出るディフェンスで魅せた。37分、FL布巻峻介が素早く前に出て相手をタックルで仕留める。さらに立川がパスの受け手にプレッシャーを与えて、ボールが乱れたところを山田がタイミング良く拾い上げて、そのまま60mを走りきってインゴールに飛び込み14対13。山田のこういったトライはトップリーグでも何度も目にしてきたが、チームで連動していたことが大きかった。「雰囲気を変えるプレーをしたかった。みんなのディフェンスのおかげです」(山田)