「総合力」の違いを示した青学大のV 早稲田大OB八木勇樹が出雲駅伝を解説
連覇を飾った青山学院大。序盤はリードされる展開が続いたものの、後半に総合力の違いを見せつけた 【写真は共同】
レースは序盤から青山学院大と、1区から3区まで1年生をそろえた東海大が先頭争いを繰り広げる。東海大は3区で關(せき)颯人が、青山学院大との差を23秒に広げてトップに立ったものの、青山学院大は5区の安藤悠哉が区間記録を更新する快走を披露。東海大をとらえ、最後はアンカーの一色恭志が危なげない走りで、ゴールテープを切った。
青山学院大の勝因はどこにあったのか。早稲田大が学生駅伝3冠(2010年〜11年)を達成したときの主将で、現在は「YAGI RUNNING TEAM」の代表として活動するプロランナー・八木勇樹選手に、勝敗を分けたポイントや、このあとに続く全日本大学駅伝、来年1月の箱根駅伝の展望を聞いた。
青学大にあった後半の強さ
事前の予想として、連覇を狙う青山学院大、(ドミニク・)ニャイロ選手がアンカーにいる山梨学院大が、出雲駅伝の優勝候補になっていました。それに加えて1年生に力のある選手がそろっている東海大の3校が、短い距離の出雲駅伝でどのような争いをしていくのか。そこが注目ポイントで、その通りのレース展開になったと思います。
――勝負の分かれ目はどの部分だったのでしょうか?
今回はあまり1人で大きく流れを変えられる選手がいなかったこともあり、最後はアンカー勝負だと思っていました。1つの目安は、青山学院大の一色選手とニャイロ選手の差。一色選手がたすきを受けたときに、ニャイロ選手と30秒以上の差が付いていれば山梨学院大は厳しい。3区終了時点で、青山学院大の下田(裕太)選手の動きがあまり良くなかったこともあり、そこを山梨学院大がうまく詰めて、極力差がない状態でアンカーにつなげられればと思っていたのですが、後半区間で10秒くらいずつ徐々に差がついていきました。それもあって、ニャイロ選手は届かなかった。勝負の分かれ目というより、全体の流れとして、最後の一色選手にうまくつなげられた、その総合力こそ青山学院大の勝因だったと思います。
――青山学院大の強さはやはりその総合力にあると?
昨年までは、チームの雰囲気や、流れに乗っていた部分があったと思うんですね。ただ今年の出雲駅伝に関しては、本当にチーム力で勝ったと思います。というのも、オーダーが出た時点で、青山学院大は前回の箱根を経験した選手が何人かいて、駅伝を知っている選手が多くいると感じました。1区に1年生を起用しましたが、鈴木(塁人)選手がうまく流れに乗れば、いけるかなと思っていました。たとえ途中で1人失速したとしても、後半に盛り返せる力が青山学院大にはある。ただ、他のチームは途中の区間で1人でも失速したら、盛り返す力がなかった。
青山学院大は1区間で1分を稼ぐわけではないですけど、10秒くらいの差を着実につけていった。そこが勝因だったと思います。昨年の久保田(和真)選手や神野(大地)選手といったエース級が卒業しても、勝負できる選手がそろっていた。そういう意味で昨年の勝利と今年の勝利は内容が違ったように思います。