混沌とするアルゼンチンフットボール界 監督人事の迷走で露呈した協会の危機

無政府状態が続くAFA

コパ・アメリカ・センテナリオ終了後に代表引退を表明したメッシ。後に続く選手も出てくるのではと危惧されている 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 昨年のコパ・アメリカに続き、アルゼンチンは今年のコパ・アメリカ・センテナリオでも決勝まで勝ち進みながら、再びPK戦の末チリにタイトルを奪われた。

 程なくヘラルド・マルティーノは監督を辞任。さらにはリオネル・メッシも代表を引退する意思を表明したことで、他のスター選手たちも自分たちのサイクルが終わったと判断し、メッシに続いて代表を離れていく可能性も危惧されている。

 1993年のコパ・アメリカ優勝を最後に、アルゼンチンは何度もあと一歩のところまで迫りながら、長年にわたりタイトルを逃がし続けてきた。だが、マルティーノやメッシが代表から離れた最大の理由は、無政府状態が続くアルゼンチンフットボール協会(AFA)の混乱にある。

 AFAは今、史上最大の危機に陥っている。

 深刻な汚職体質が表面化したことで複数の役員が起訴され、政府も介入を試みる事態に発展。並行してFIFA(国際サッカー連盟)とCONMEBOL(南米フットボール連盟)は4人の役員で構成された「正常化委員会」を設立し、遅くとも来年の6月30日までに行われる会長選挙まで、首脳陣が不在となるAFAの運営を代行することを決めた。

早急に解決すべき問題を抱えていたが……

アルゼンチン代表の新監督にはエドガルド・バウサが就任。その発表が行われたのは招集リスト提出期限の2週間前だった 【写真:ロイター/アフロ】

 AFAが早急に解決すべき問題は2つあった。1つは8月に開幕予定の国内リーグを運営できる保証すらない深刻な財政状態。もう1つは9月1日(現地時間)にウルグアイ、同6日にベネズエラとのロシアワールドカップ(W杯)南米予選を控えているフル代表の監督人事だ。

 この2試合の招集リストは8月14日までに提出する必要がある。正常化委員会の最高責任者であるアルマンド・ペレスが新監督を発表したのは、招集リスト提出期限のちょうど2週間前の8月1日のことだ。

 08、14年にコパ・リベルタドーレスを制した実績を持つ現サンパウロ監督エドガルド・バウサ。07年のコパ・リベルタドーレス王者となったボカ・ジュニアーズを率いたミゲル・アンヘル・ルッソ。リーベル・プレートやサン・ロレンソで数々のタイトルを獲得し、今年のコパ・アメリカではパラグアイ代表監督を務めたラモン・ディアス。1986年のW杯メキシコ大会を制したアルゼンチン代表メンバーであるホルヘ・ブルチャガとネリー・プンピード。

 複数の候補者と面談を行った後、結局ペレスは真っ先に話し合いを行ったバウサを新監督に選んだ。だがペレス本人を含め、代表の中心選手たちが本当に望んでいたのはトップレベルの2人の指揮官、ディエゴ・シメオネとホルヘ・サンパオリだったと言われている。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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