イチローの打撃を開花させた名コーチ 名付け親でもある新井宏昌氏インタビュー
イチローはオリックスで新井宏昌コーチ(当時)とともに自らのバッティングを確立した 【写真は共同】
「変わり者と当たってしまった」
イチローを最初に見たのは、私が引退した翌年の1993年でした。解説の仕事でグラウンドに行って打撃練習を見ていた時、当時オリックスのコーチをしていた大熊(忠義)さんから「右投げ左打ちの若手がいるから、ちょっと見てほしい」と言われ、それがイチローだったんです。
意識して見たのですが、正直その時は特に印象に残らなかったですね。しなやかな感じはありましたけど、個性的でもなかったし、目に留まるような打球を飛ばしていたわけでもありませんでした。ただ、その日、数分見ただけだったので、もし何日か連続して見ていたら、この先どうなるか私なりに想像できていたかもしれません。
――その翌年にオリックスの打撃コーチとしてイチロー選手と再会しますが、その時の印象は?
最初のティーバッティングで、初めて見た時とは違う印象を抱きました。私がボールをトスしようとした時、先に彼が足を振り子のようにして「自分が動くから、どうぞ投げてください」と言わんばかりの動きをしてきたんです。普通、野球ではピッチャーが動かないとバッターは動けない。それなのに、打ちにくる動作を先にするわけです。
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