イチローも不思議?一塁到達タイムの速さ 代打で投ゴロもピッチャーの表情に戸惑い

丹羽政善

元同僚も「瞬間に立ち会いたい」

本人は「昨年より速いことは感触的にわかっている」と一塁到達タイムを昨年よりも0.1秒以上縮めているイチロー 【写真は共同】

 日本時間20日の練習前、元マリナーズ(2002〜04年)で、現在はフィリーズのテレビ解説を務めているベン・デービスに会った。

 マリナーズ時代は捕手だったが、その後投手に転身した経緯がある彼は、「あと6本かぁ。フィラデルフィアで打ってくれないかなぁ、ぜひ、その瞬間に立ち会いたいんだ」と懇願するように言ったが、果たしてどうだろう。

 6本とはもちろん、イチローの3000本安打までの残り本数だが、この日もイチローはスタメンを外れており、「ちょっと厳しいかな」。出場が代打だけなら、確かに難しい。

 仮にフィラデルフィアで行われる、21日、22日の2試合でスタメン出場したとしても簡単な本数ではない。延長に突入して7回ぐらい打席に立てば別だが、その可能性の方が低い。

 前日、彼は帰るときにばったりイチローに会い、そのときイチローが、「『早く打ってその先に集中したい』って話していた」そうだが、この起用が続く限り、まだまだ騒ぎが続きそうだ。

今季の一塁到達値は3.85秒前後

 試合前の監督会見でも、今日はイチローに関する質問がなかったが、ドン・マッティングリー監督が、「イチローについてはいいのかい?」と聞き返すほど。すでに聞き尽くした感があるが、みんなが知りたいのは、「いつ、スタメン出場しますか?」であり、そのことに関しては、あまり口にしない監督だけに聞くのがはばかられる。そもそもそれを聞くのは失礼にあたる。外野手の誰かが少しケガをして、「じゃあ、明日はイチローを使う?」なら、かろうじて許されるが――。

 ただ、誰よりももどかしいのはイチロー本人だろう。今年の前半戦を終えたとき、状態や感じているものをこう話した。

「いや、(出場)機会が少なすぎてね。そんなの表明することじゃない」

“少なすぎて”にさまざまな思いがにじむが、状態に関しては十分手応えがあるよう。

 先日、3安打をマークしたカージナルス戦では、一塁までのタイムが話題となったが、そのときこう話している。

「昨年より速いことは感触的にわかっているんですけど、そんなに違うとはね」

 昨年は、球場に備え付けられたビデオカメラから球速や一塁までのスピードをはじき出す『STATCAST』によれば、平均3.98秒でリーグ5位だった。そして今季は3.85秒前後であることが多いという。0.1秒以上も縮まっている。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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