メッシの代表引退発言とピッチ外の混乱 理由はコパ敗戦による傷心だけではない
ずさんな代表チームのオーガナイズ
望んでいた結末とは異なる準優勝で幕を閉じたコパ・アメリカ・センテナリオ。メッシはつかの間のバケーションに入っている 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】
14年のワールドカップ(W杯)・ブラジル大会を皮切りに、国際大会において3年連続で3度の決勝に勝ち進みながら、アルゼンチンはそのすべてに敗れた。あらゆるタイトルを獲り尽くしてきたバルセロナとは対照的に、いまだにフル代表では何のタイトルも手にできていないメッシは、今回の敗退にひどく傷ついているようだ。チリとの決勝でPKを外したことも、敗戦のショックを倍増させる原因となったに違いない。
しかし、メッシが代表引退を口にした理由は他にもある。
決勝の数日前、メッシは今大会を通して代表チームのオーガナイズがあまりにもずさんであるとの不満を、SNSを使って漏らしていた。アルゼンチンサッカー協会(AFA)を長年にわたって牛耳り、FIFA(国際サッカー連盟)の副会長も務めていたフリオ・グロンドーナ元会長が亡くなった14年夏以降、権力争いが泥沼化しているAFAは混乱状態が続いている。アルゼンチン代表は今大会、フライトの遅延など多くのトラブルに見舞われていた。
戦い方が一変してしまった決勝
チリとの決勝ではメッシ(10)が前線で孤立してしまった 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】
昨年のチリ大会と同じく、今大会のアルゼンチンは複数の選手が敵陣に攻め上がり、高い位置からコンスタントにプレスをかけ続けるという、極めて攻撃的、野心的なスタイルを貫いてきた。だが決勝ではその戦い方が一変し、チーム全体が引いてしまい、メッシを前線で孤立させてしまった。インターネット上ではメッシが5人のDFに取り囲まれ、その周囲にもチリの4選手しかおらず、アルゼンチンの選手が1人も見当たらないという写真が話題となったが、それはまさにこの試合を象徴するシーンだと言えた。
昨年はパラグアイに6−1、今回は米国に4−0と、いずれも直前の準決勝では大勝したにもかかわらず、決勝では一転して攻撃陣が極めて乏しいパフォーマンスにとどまったのはなぜか。その原因は複数考えられる。
まず前回と今大会では、チリは異なる監督に率いられていた。特筆すべきはそれがいずれもアルゼンチン人(昨年はホルヘ・サンパオリ、今年はフアン・アントニオ・ピッツィ)であることだ。対するアルゼンチンはいずれもヘラルド・マルティーノが率い、結果は全く同じスコアレスドローからのPK戦による決着となった。