なでしこが求めた選手層の厚みと柔軟性 五輪最終予選を見据えたオランダ戦の狙い
リオ五輪最終予選の日程が決定
オランダ遠征の集大成となる試合で、日本はオランダに1−3で敗れた 【Getty Images】
先の夏にカナダで行われたワールドカップ(W杯)で、日本は準優勝を果たしたが、中国、オーストラリアもベスト8に進出した実力国である。日本のFIFAランキング4位(9月25日付)に対し、北朝鮮のそれは6位と力は拮抗(きっこう)している。韓国だって、日本相手に闘志をむき出しにして挑んでくるはずだ。この厳しい予選を450分間、フルに出場する選手は出てくるのだろうか。「ありえますね」と佐々木監督は言う。
「余裕があればターンオーバーをやりたいんですけどね。しかし、ロンドン五輪最終予選(の初戦)では、タイ戦をセカンドチーム主体で戦ったら、前半は点を取れなかった。結局、後半早めに3人投入して、3−0で何とか勝ち切った。だから今回のベトナムみたいなチームも意外と侮れない。3試合後ですからベトナム戦も予選に慣れてきたところ。日本がしくじることもありますからね」
経験豊富な選手と若手の融合
「アジア最終予選は過酷なスケジュールですが、誰が出ても遜色のないチーム層にすることが大事だと思ってます」(佐々木監督)
また、戦い方のオプションを増やすことも、オランダ遠征のテーマだった。相手がコンパクトな布陣で臨んできたら、日本は2トップが相手の裏を狙い、相手の陣形が間延びしていたら、1トップとトップ下を縦に並べ、さらにボランチの攻撃参加も促し懐の深いサッカーをする……などだ。
決定力を上げることも必須の課題だ。現地時間(以下同)26日に行われたオランダとの試合(非公開、2−0でオランダが勝利)では前半と後半で選手を入れ替えたが、決定機を逃し続け完封負けを喫し、翌日はシュート練習と相手を崩す練習に時間を割いていた。
今回の遠征先としてオランダを選んだことの意図はなんだろうか。上田栄治団長は、こう説明する。
「W杯の決勝トーナメント1回戦で、日本はオランダと戦いましたが、あの時のサッカーが非常に良かった(2−1で日本の勝利)。彼女たちはテクニックだけでなく、高さ、パワーがあるので、オーストラリア戦を想定した試合ができる。しかし、オランダのサッカースタイルとは違いますが、韓国、中国、北朝鮮も非常にフィジカルのあるチームですから、そういう意味でもオランダに来てよかったと思ってます」
前半“個”の力を出しきれず2点を失う
オランダ戦の先発メンバー。有町(11番)を起用し、複数のポジションを試した 【Getty Images】
2トップは大儀見優季と有町紗央里のペアだった。大儀見は28歳、有町は27歳と2人の年齢はほぼ同じだが、この試合の前までの時点で大儀見の代表124キャップ55ゴールに対し、有町は代表4キャップノーゴールとなでしこではルーキーのような存在だ。この2人は9分、左サイドで連携し、有町、中島依美とパスがつながり阪口夢穂 が絶好機を迎えた。10分、16分にも大儀見と有町が絡んだプレーがあった。前半半ばごろ、有町は宮間あやとポジションを交代し左サイドハーフに入った。
有町は「どっちも好きです。左だったらフリーな状態でもらえるので、そこからクロスだったり、イメージを持っている。ただ、真ん中ならゴール前で抜け出せる」と短い時間でのコンバートに屈託がないが、前半限定の出場だっただけに、有町が大儀見とのコンビネーションをどう発展していくか、もう少し実践で見てみたかった気もする。
前半は日本に決定的なミスが出てしまい、オランダに2点を奪われてしまったが、何度かビッグチャンスも作っていた。しかし、オランダのGKサリ・ファン・フェーネンダールのファインセーブもあって、前半の日本はノーゴール。攻守の大事な場面で、日本は“個”の力を出し切れなかった。