なでしこが求めた選手層の厚みと柔軟性 五輪最終予選を見据えたオランダ戦の狙い

中田徹

リオ五輪最終予選の日程が決定

オランダ遠征の集大成となる試合で、日本はオランダに1−3で敗れた 【Getty Images】

 サッカー日本女子代表(なでしこジャパン)は遠征先のオランダで、リオデジャネイロ五輪最終予選の日程を聞いた。2月29日のオーストラリア戦を皮切りに、韓国(3月2日)、中国(4日)、ベトナム(7日)、北朝鮮(9日)と、わずか10日間で5試合も戦う。前回のロンドン五輪予選も、同じようなフォーマットで戦った経験を持つ佐々木則夫監督は、「この予選は過酷で、しびれるんですよ」と語った。

 先の夏にカナダで行われたワールドカップ(W杯)で、日本は準優勝を果たしたが、中国、オーストラリアもベスト8に進出した実力国である。日本のFIFAランキング4位(9月25日付)に対し、北朝鮮のそれは6位と力は拮抗(きっこう)している。韓国だって、日本相手に闘志をむき出しにして挑んでくるはずだ。この厳しい予選を450分間、フルに出場する選手は出てくるのだろうか。「ありえますね」と佐々木監督は言う。

「余裕があればターンオーバーをやりたいんですけどね。しかし、ロンドン五輪最終予選(の初戦)では、タイ戦をセカンドチーム主体で戦ったら、前半は点を取れなかった。結局、後半早めに3人投入して、3−0で何とか勝ち切った。だから今回のベトナムみたいなチームも意外と侮れない。3試合後ですからベトナム戦も予選に慣れてきたところ。日本がしくじることもありますからね」

経験豊富な選手と若手の融合

 なでしこジャパンは若手選手の台頭が今ひとつ。だから、今回のオランダ遠征は経験豊富な選手と若手選手の融合を図ることがテーマだった。そして、五輪最終予選の日程が出た今、選手層をより厚くすることの重要性が取材する側にもひしひしと感じられるようになってきた。

「アジア最終予選は過酷なスケジュールですが、誰が出ても遜色のないチーム層にすることが大事だと思ってます」(佐々木監督)

 また、戦い方のオプションを増やすことも、オランダ遠征のテーマだった。相手がコンパクトな布陣で臨んできたら、日本は2トップが相手の裏を狙い、相手の陣形が間延びしていたら、1トップとトップ下を縦に並べ、さらにボランチの攻撃参加も促し懐の深いサッカーをする……などだ。

 決定力を上げることも必須の課題だ。現地時間(以下同)26日に行われたオランダとの試合(非公開、2−0でオランダが勝利)では前半と後半で選手を入れ替えたが、決定機を逃し続け完封負けを喫し、翌日はシュート練習と相手を崩す練習に時間を割いていた。

 今回の遠征先としてオランダを選んだことの意図はなんだろうか。上田栄治団長は、こう説明する。

「W杯の決勝トーナメント1回戦で、日本はオランダと戦いましたが、あの時のサッカーが非常に良かった(2−1で日本の勝利)。彼女たちはテクニックだけでなく、高さ、パワーがあるので、オーストラリア戦を想定した試合ができる。しかし、オランダのサッカースタイルとは違いますが、韓国、中国、北朝鮮も非常にフィジカルのあるチームですから、そういう意味でもオランダに来てよかったと思ってます」

前半“個”の力を出しきれず2点を失う

オランダ戦の先発メンバー。有町(11番)を起用し、複数のポジションを試した 【Getty Images】

 今回の遠征の集大成となる29日のオランダ戦は、こうした多くのテーマを90分間の中に詰め込みすぎてしまったきらいがあった。

 2トップは大儀見優季と有町紗央里のペアだった。大儀見は28歳、有町は27歳と2人の年齢はほぼ同じだが、この試合の前までの時点で大儀見の代表124キャップ55ゴールに対し、有町は代表4キャップノーゴールとなでしこではルーキーのような存在だ。この2人は9分、左サイドで連携し、有町、中島依美とパスがつながり阪口夢穂 が絶好機を迎えた。10分、16分にも大儀見と有町が絡んだプレーがあった。前半半ばごろ、有町は宮間あやとポジションを交代し左サイドハーフに入った。

 有町は「どっちも好きです。左だったらフリーな状態でもらえるので、そこからクロスだったり、イメージを持っている。ただ、真ん中ならゴール前で抜け出せる」と短い時間でのコンバートに屈託がないが、前半限定の出場だっただけに、有町が大儀見とのコンビネーションをどう発展していくか、もう少し実践で見てみたかった気もする。

 前半は日本に決定的なミスが出てしまい、オランダに2点を奪われてしまったが、何度かビッグチャンスも作っていた。しかし、オランダのGKサリ・ファン・フェーネンダールのファインセーブもあって、前半の日本はノーゴール。攻守の大事な場面で、日本は“個”の力を出し切れなかった。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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