【中山大障害】ニシノデイジーが2年ぶりの王座奪還、8歳でも「成長している」衰え知らずの個性派ジャンパー

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ニシノデイジーが復活の中山大障害V、8歳にして王座奪還を果たした 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 暮れの障害レースの大一番、第147回J・GI中山大障害が12月21日(土)、中山競馬場4100m芝で行われ、五十嵐雄祐騎手が騎乗した4番人気ニシノデイジー(牡8=美浦・高木厩舎、父ハービンジャー)が1着。2022年覇者が同レース2年ぶり2度目の優勝を飾った。

 ニシノデイジーは今回の勝利でJRA通算32戦6勝(うち障害12戦3勝)。重賞は2018年札幌2歳ステークス、東京スポーツ杯2歳ステークス、2022年中山大障害に続き平地・障害合わせて4勝目。また、騎乗した五十嵐騎手は2013年アポロマーベリック、22年ニシノデイジー以来の中山大障害3勝目、高木登調教師は22年ニシノデイジーに続く同レース2勝目となった。

 5馬身差の2着には草野太郎騎手騎乗の3番人気エコロデュエル(牡5=美浦・岩戸厩舎)、さらに1馬身差の3着には小牧加矢太騎手騎乗の5番人気ネビーイーム(牡6=栗東・佐々木厩舎)が入線。なお、マイネルグロン、ダイシンクローバー、ロードトゥフェイムが競走中止となり、出走9頭のうち6頭が完走した。

2年前、障害転向4戦目でオジュウチョウサンを撃破

オジュウチョウサンを負かした2022年中山大障害以来、2年ぶりの勝利となった 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 8歳の大ベテランが思い出の中山で2年ぶりの王座奪還。主戦の五十嵐騎手は開口一番、喜びを語った。

「最高です! GIを勝ってからなかなか勝てない時期が続きましたが、中山は本当に得意としている舞台ですので、力を十分に出すことができたと思います」

 2年前の中山大障害では転向4戦目のGI初挑戦ながら、絶対王者オジュウチョウサンを撃破してビッグタイトル初戴冠という離れ業をやってのけたニシノデイジー。2歳時には札幌2歳ステークス、東京スポーツ杯2歳ステークスを連勝し、GIホープフルステークスでも3着。翌年の三冠クラシックはすべて出走の皆勤賞を果たし、ダービーでは5着に奮闘した芝のトップホースだった。

 当然、古馬となってからも芝の一線級としての期待は大きかったが、気性の難しさが解消できず、次第に成績は下降線をたどるようになっていた。そんな中で6歳にしての障害転向。競走馬としてはすでにベテランの域に入っていたが、この新たなチャレンジが大きなプラスとなり、わずか4戦目でのタイトル奪取。オジュウチョウサンの次の障害スターホースとして、再びニシノデイジーにスポットライトが集まった。

先行勢がやり合う中、課題の折り合いもバッチリ

先頭が何度も入れ替わる中、ニシノデイジー4番手からチャンスを狙っていた 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 ただ、その後も気性面がどうしても改善できず、再び勝利から遠ざかったこの2年。その間、前年王者マイネルグロン、目下重賞連勝中で1番人気の支持を集めたジューンベロシティら年下のライバルが台頭し、2年前の王者は今回4番人気の支持にとどまった。だが、そのまま“過去の馬”に甘んじるつもりはない。ニシノデイジーは密かに逆襲の牙を研いでいたのだ。

「最初にゲートを出て、内の馬が外にヨレてきたのでちょっとガチャガチャっとしたんですが、4、5番手で折り合いがすごくつきました。馬が成長していますね」

 ジューンベロシティが勢いよくハナに立って前半を引っ張る形になったが、2号坂路でマイネルグロンが、そして最初の難関である大竹柵を越えてからはテイエムタツマキが仕掛けて先手を奪うなど、少頭数の長丁場レースながら出入りの激しいレース。この乱ペースに巻き込まれる形となり、余力をなくしてしまったのが4着に敗れたジューンベロシティだった。

「もうちょっと息を入れて走りたかったのですが、忙しくなりすぎた分、後ろの馬が有利になってしまったかなと思います。でも、全てが上手く行かないと勝てないのがGIですからね。また仕切り直しです」と肩を落としたのは高田潤騎手。騎手時代の同期である武英智調教師とタッグでのGI獲りはお預けとなった。

3コーナーから一気の勝負「イメージ通り」

3コーナーからのスパートで勝負を決めたニシノデイジー、鞍上の五十嵐騎手は「イメージ通りの競馬」 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 一方、ニシノデイジーは前がやり合う展開をじっと見据えながらの4番手追走。五十嵐騎手が振り返ったようにうるさい素振りはまったく見せず、まさに虎視眈々とチャンスをうかがっていた。そして、動いたのは最後の3コーナーから。バンケットの上りで一気に前に出ると、最終障害も無事にクリア。最後の直線は堂々の先頭で迎えた。

「デイジーがしまい勝負で切れるタイプじゃないのは何度も乗っていて分かっているので、最終障害と4コーナーは先頭でというイメージで競馬したいと思っていました。その通りにできましたね」

 こうなると重賞2勝を挙げた平地力が存分に生きてくる。「いやあ、でも割と仕掛けた分、最後は脚が上がっていました」とジョッキーは苦笑いを浮かべつつも、2着馬につけた差は圧巻の5馬身。「他の馬も脚は上がっていたと思いますが、デイジーもひと踏ん張りしてくれました」と、8歳馬の頑張りに賛辞を送った。

主戦場を変えてなお2歳から息の長い活躍

2歳から平地、障害と息の長い活躍に共感するファンも多いだろう 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 この秋、ドウデュースが決して平坦ではなかった道のりを乗り越えて、2歳から4年連続でGIを勝ったことが多くのファンの共感を呼んだ。このニシノデイジーも2歳時に平地の重賞を勝ち、いったんは低迷しながらも障害転向で新境地。そして、同期のクラシックホースであるロジャーバローズ、サートゥルナーリアらはすでに種牡馬となって2世が次々とデビューする中、この日8歳にして再びGIを勝った。主戦場を変えてなお息の長い活躍に、自分の人生を重ね合わせて見ているファンも多いのではないか。

 今後について、高木調教師は「(現役続行も含めて)オーナーと相談します」と語るにとどめた。だが、鞍上は「成長しています」とひと際力を込めて語り、トレーナーもまた「気性は相変わらずだけど、ちょっとずつ良くなっている」と明かしたように、現役の障害馬としてまだまだ上昇の余地を残している。

「ニシノデイジーや他の障害馬たちを応援に来てくださった方々もいっぱいいると思いますが、今日はニシノデイジーが頑張ってくれました。これからも障害レースを盛り上げていきたいと思っていますので、応援よろしくお願いします」と、インタビューを通じて呼びかけた五十嵐騎手。2025年も衰え知らずの個性派ジャンパーとして障害界をけん引する更なるニシノデイジーの活躍を見たいものだ。(取材・文:森永淳洋)
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