3位の侍ジャパンが世界一へ必要なもの プレミア12で明確になった課題

中島大輔

筒香ら個々の選手には大きな収穫

「成長するための舞台」で4番を務めるなど大きな自信をつけた筒香 【Getty Images】

 11月8日に始まった今大会を振り返ると、準決勝・韓国戦の最終回以外はずっと良い流れで来ていた。打線はつながりを見せ、日本投手陣は制球力、変化球、メカニックのどれをとっても国際舞台で段違いの力を披露していた。痛恨のミスさえ起きなければ、プレミア12は輝かしい大会として刻まれているはずだった。

 個々の選手に聞いても、大きな収穫があったと振り返っている。とりわけ自信をつけたのが、中村剛也の欠場以降に4番を任された筒香嘉智だ。プレミア12終了後、ドミニカ共和国のウインターリーグに参戦する左打者は、今大会を「成長するための舞台」と見据えていた。
「国際大会にしかないプレッシャーや緊張はもちろん感じましたけど、まあ、変な感じはしなかったです」

 明確なビジョンを持って臨んだからこそ、限りなく平常心で臨むことができたのだろう。打席ではシーズン中と同じようにセンターから逆方向に強く打ち返すことを心がけ、3割8分5厘と高打率を残した。12日のドミニカ共和国戦ではレフト守備の際に打球を見失って二塁打とすると、ヒーローインタビュー中にノックを受けるなどストイックさを貫いている。

 毎年オフ、渡米して最新トレーニングで鍛え抜いている筒香にとって、今回は自分の進む道を再確認する舞台でもあった。
「(センターから逆方向中心のバッティングは)自分が信じてずっとやっていることなので。それは自分のなかで変えるつもりもないですし。答えはないので僕の思っていることが合っているかもわからないんですけど、自分が思う道を進んでいればいいかなと思います」

秋山「自分の糧にしないといけない」

 課題が残ったと振り返るのが、埼玉西武の秋山翔吾だ。日本記録のシーズン216安打を打ち立てた左打者は、今大会では1番センターとしてチーム唯一のフル出場を果たしたが、打率2割5分7厘だった。ペナントレース後半から模索していたスタイルだが、国際舞台でも確立できなかった。
「シーズン前半は積極的に行かせてもらって、自分のことしか考えていないようなバッティングでした。こういう大会になればなるほど、というかシーズン後半になればなるほど『球を見なきゃいけない』とか、『打つだけでは』というところがあったので。その辺をどうしていこうかなと考えてはいたんですけど、打っていい打席でも受け身な自分が出てしまったところがありました」

 いつも通りの気持ちでプレーしようとしたものの、「負けられない試合」と重圧を感じていた。そうして8試合を戦い、新たに考えることがあった。
「積極的に打ちにいき、自信を持ってヒットにできるという気持ちが持てたら、また引き出しが増えると思います。まだまだちょっと整理し切れないところがある。自分の糧にしないといけない時間だし、いい時間を持てたんですけど、結果としては悔しいところです」

日本の守護神へ強い決意見せた山崎

 大卒のルーキーイヤーから横浜DeNAでクローザーを務めた山崎にとって、日の丸を背負うのはこれ以上ないシーズンの終わり方になった。
「本当に全部いい経験をさせてもらって、自分の野球人生において大きなきっかけとなる舞台でした。僕の場合は1年目で、自分のなかでうまく行きすぎていると思っているので。来年につながる1年にもなりますし、もっと上に行きたいという1年にもなったので。1年目にこれだけの成績を収められたのは、自分の強みになるのかなと思いますね」

 DeNAではチーム最多の58試合、プレミア12では3試合に登板した。11月下旬まで投げてきた右腕は、これからのオフ期間に身体を休めることと、来季に向けたトレーニングについてのバランスをどう考えているのか。そう聞くと、これから探していくという答えが返ってきた。
「休みすぎても良くないと思うし、1年目で何もわかっていないのは新人の弱みでもあるので。そういう弱さを打破して、自分の信念を貫き通して、後悔しないようなオフを過ごしたいなと思っています」

 クローザーカルテットのひとりとして代表入りした今回、山崎が最終回を任されることは1度もなかった。それが、次に向けた原動力にもなっている。
「日の丸は本当に重い。悔しさもありますし、まだまだできるという自分の中での気持ちもある。負けて、(2017年のWBCで)やり返したい気持ちはあります。自分のなかで、何とか日本のクローザーになって9回を守り抜きたい気持ちは強くなりました」

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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