「日本野球の世代交代を感じた大会だった」 ロッテ・井口が振り返る侍ジャパン
試合は初回に山田哲人のソロ本塁打で先制すると、2回には2打席連続となる山田の2ラン、中田翔の2ラン、松田宣浩の2ランなどで一挙7得点。7回には秋山翔吾にも2ランが飛び出して、10点差コールドゲームとなった。
3位決定戦も含めて、今大会の侍ジャパンについて千葉ロッテ・井口資仁に振り返ってもらった。
「山田君の2発でみんな吹っ切れた」
3位決定戦に、山田の2打席連続本塁打など5本塁打で、11対1と7回コールドでメキシコに快勝した日本。井口は「山田君の本塁打で周りが乗っていった」と振り返った 【写真は共同】
おとといの嫌な流れを初回の山田君の一発で吹き飛ばしたというか、あれで日本は吹っ切れましたよね。そういう意味で、2回に一気に7点取れて、本来のみんなの持っている力というのが最後に出て良かったなというのはありますね。
――韓国戦に敗れて、3位決定戦に臨む選手の表情はどう感じていましたか?
気持ちの切り替えはできていたと思うんですけど、やっぱり先制点を取るまでは、というのはあったと思います。それを山田君が2発打って、ああいう流れになりましたからね。本当に大きかったです。あの2発で周りが乗っていきましたもんね。マッチ(松田)も最後の秋山君も。
――井口選手から見て山田選手のいいところは?
タイミングの取り方がいいですよね。足を上げてタイミング取るのは難しいんですけど、2打席目はチェンジアップだったと思いますが、ああやってタイミングを崩されないでしっかりミートしますもんね。
――6番の中田選手も3本塁打15打点と打ちまくりました。日本打線の印象をあらためて教えて下さい。
チームで4番の選手が何人もいるわけですが、4番だからってブンブン振るんじゃなくて、四球もいっぱい取れていましたし、普段のチームとは違った形でつなぐというのが侍ジャパンとしてできていたんじゃないかなと思います。みんなが後ろを信頼してどんどんつないでいましたから。中田君もチームでは自分が決めなくちゃというタイプの選手ですけど、ああやってつないでいくとやっぱり最強の打線になりますよね。それが日本の強みじゃないですかね。どうしても海外のチームの多くは、1番から9番まであんまり関係ない感じですけど、日本は違いますから。打線としてはずっと調子が良かったと思いますし、今回出場したチームの中でもナンバーワンじゃないですかね。
――投手陣は振り返ってどうですか?
侍に入るとチームとは違う役割になりますから、中継ぎとか抑えの投手は普段のチームと投げるタイミングが違うので難しいとは思うんですけど、投手陣はみんな安定していたんじゃないですか。そんなに崩れる投手もいなかったですしね。
――世界と戦うための日本の課題はどこにあると感じましたか?
シーズンみたいにしっかりと役割分担をしたほうが選手もやりやすいかなと感じました。シーズンでは先発だった投手を7回、8回に出すのも難しいですよね。そういう意味ではもう少し中継ぎのいい投手もメンバー入りしていたらいいなとは思いましたね。
「若い選手は今回を財産にしてほしい」
代表になったことで自覚が出てくると思うので、自分が侍ジャパンなんだという自覚を持ってプレーすることが大事ですし、それがチームに戻っても自然と周りに良い影響を与えると思います。
やっぱり日の丸の背負う重みは、日本シリーズだったり、ワールドシリーズだったり、とは、また全然違いますから。勝つ、負ける関係なく、国旗を背負って戦ったことを財産にしてほしいですよね。日本代表だとオールスターよりベストメンバーが集まるわけですからね。1カ月近く一緒にいたわけですから、自分にないものをいろいろ吸収できたり、そこで過ごした時間は本当に財産ですから。
――今大会を通じて侍ジャパンの印象は?
柳田(悠岐)君と内川(聖一)君は出られなかったですけど、その代わりに選ばれた中村(晃)君だったり、平田(良介)君だったりがすごい活躍しましたし、本当に日本野球の層の厚さは感じましたね。代わりに出てくる選手もいっぱいいますし、そういう意味では投打のバランスが本当にあるな、と思いました。
年間通してジャパンとしての試合数をこなしていけば、もっともっと強いチームになると思います。直前でしか試合ができていないので、春先とかに国際大会を経験できればチームとしてはどんどんまとまりもできて、強くなっていくだろうし。もっともっとジャパンの試合を増やしてほしいですよね。
でも、トータルで見たら本当に準決勝だけでしたからね。8試合戦ってあそこの1敗だけですから。本当に悔やまれる1敗だったし、逆に言えばこの悔しさを次にぶつけないといけないですよね。
あとは最終的にはプレミア12もメジャーの選手たちが出てくるようになれば面白いですよね。世界ランキング上位チームは結局はメジャー選手を多く輩出している国が多いですし、本当にフルの戦力で戦えるのか見てみたいですよね。
「いい選手たちを見て勉強になった」
シーズン中は敵ですけど見ていて、やっぱりすごいなと思います。ああいうのを経験してもうひと回りも、ふた回りも強くなるんだなって思うと、脅威ですけど…。いい選手は敵ながらも見ていても本当に楽しいですし、どんな感覚で打っているんだろうとか、すごい勉強になりましたね。
みんな若いチームだったので、本当に先につながる侍だったと思います。僕も見ていて新鮮でした。こういう選手たちが5年、10年侍でやって、また次にバトンタッチしていくんでしょうから、次の世代がどんどん出てくるのも楽しみですよね。
――青山学院大学やホークスでも先輩だった小久保裕紀監督については?
初の監督だったと思うので、難しかったと思うんですけど、小久保さんの選手への信頼感が伝わってきましたね。韓国戦で負けたときの小久保さんのコメントも含めて、選手のことを本当に信頼して使ってましたし、いきなりああいう選手たちをまとめるのは大変だと思うんですけど。気を使わなくちゃいけないし。ただ気配りができる方なので、本当にこれから先が楽しみですね。コーチ陣も含めて近々まで現役でやっていた方も多く、この大会は本当にいい経験になったと思います。それと、監督、コーチも若くなってきて日本の野球も世代交代が進んでいる感じは受けました。
選手としてシーズンをレギュラーでやっている人たちが11月終盤までプレーするのはどれだけ大変かわかりますからね。それも最後に韓国戦のようなしんどい試合をするわけですから。本当に選手にはお疲れ様と言いたいですね。
井口資仁/Iguchi Tadahito
【写真は共同】
国学院久我山高2年夏に甲子園出場。青山学院大では東都リーグ記録となる24本塁打を放ち、大学4年時はアトランタ五輪・野球日本代表に選出され、銀メダル獲得に貢献した。1996年、福岡ダイエー(現・ソフトバンク)に逆指名で入団すると、2001、03年には盗塁王を獲得。05年からホワイトソックスに移籍すると、「2番・セカンド」に定着し、移籍1年目からワールドシリーズ制覇を経験。09年から日本球界に復帰し、千葉ロッテでプレー。13年には史上5人目となる日米通算2000本安打を達成した。
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