3位の侍ジャパンが世界一へ必要なもの プレミア12で明確になった課題

中島大輔

球界全体で戦う組織が不可欠

世界一奪回へ向けて、小久保監督をサポートする球界全体の取り組みが不可欠となる 【Getty Images】

 選手個々にとって、今大会が有意義な時間だったことは間違いない。それぞれの感じた収穫や課題は、今後の野球人生にとって大きな糧になるだろう。同時に、侍ジャパンは組織として反省・検討すべきことが明確になった。それが韓国戦のあの9回に集約されている。

 準決勝に投げた大谷翔平が85球、準々決勝の前田健太が90球で降板したように、今大会で100球以上投げた先発投手はひとりもいない。一方、そのしわ寄せが中継ぎ投手にいった格好だ。則本、松井、増井はいずれも4試合に登板し、最後の韓国戦で力尽きた。

 先発に配慮して使った一方、ブルペンを疲弊させていく構図はプロ野球界にも当てはまる。今後も同じ過ちを繰り返すのではなく、日本代表の敗戦をきっかけに考え直すべきではないだろうか。そうなれば、球界のトップが結集する侍ジャパンもより大きな意義を持つことになる。

 来年以降は小久保体制のまま、強化試合を経て、2017年のWBCに向けて臨んでいく。抱負を聞かれた指揮官は、目標に向けた再出発を口にした。
「世界一に再びチャレンジすることですね」
 ビジョンを持った者こそが成長できるのは、力強く進み続ける筒香の姿を見ていてもよくわかる。対して侍ジャパンは「世界一」と語るだけでなく、そこにたどり着くまでの明確な指針があるのだろうか。

 小久保監督を続投させるのであれば、もっとサポートが必要なことは明らかだ。さもなければ、次回のWBCで世界一奪還を果たす道のりにおいて、再び選手個々のパフォーマンスに依存しすぎることになる。

 プレミア12の謳い文句は、「野球国力世界一決定戦」だった。WBCで雪辱を期す侍ジャパンは、球界全体で戦う組織をつくることが不可欠だ。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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